双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

2007-01-01から1年間の記事一覧

燈光は、貝釦の色なりき

|雑記| 恒例のもちつきは仕事納めと重なり、開店頃には 丁度終わるも、早朝より準備して居たのもあってか、 今日一日が妙に長く、何処か間延びして感じられる。 途中の雨はやがて、冬の晴れ間に見舞う霙雪となって、 全くの拍子抜けした、奇妙な冬景色を連れ…

名も無き善き人びとの一日

|日々| しとしと雨の降る一日は、年の瀬と云うことも手伝って、 ぽっかりそこだけ空いてしまったよな一日。昼近くに、 一台のバンに乗ってやって来た、作業服姿の男性らが四人。 恐らく、今日が仕事納めなのかも知れないな。 皆一様に力の抜けて、安堵の表情…

散歩とシュークリームと炬燵

|徒然| |散策| 昨日の昼過ぎ、粗かた部屋の掃除を終えて身支度。母方の祖母宅が忘年会で出払ってしまうため、一人留守する祖母の世話を夕刻より頼まれて居り、しかしそれまで時間も在ることだし、叔母への贈り物など見繕いがてら、隣り街まで出掛けることに…

十二月に漂う

|日々| |音| 曇り。雨降り。曇り。雨降り。そして晴れ。 一日の中にめまぐるしい天気は、師走の慌しい匂いを せっかちに漂わせ、往来の車も皆スピードを飛ばす。 景気のせいか、それとも時勢か。一部個人宅の過剰な 電飾などを除けば、クリスマスも間近と云…

プロシュッティ先生のパスコリ

|日々| 今日は冬至だから、夜にはロウソクでも灯そうかしら。 などと考えもしたけれど、ゆく人も車の気配も まったく希薄なものだから、誰も居ないところで ロウソクを灯したりしたら、何だかかえって 寂しくなりそな気がして思いとどまった。 一体、人びと…

フランドルの海

|本| 存外に忙しい日中がばたばたと過ぎ去り、やがて 日も傾いてくる頃には、空が冷たく降りて来る。 伏せ止めの仕方を忘れてしまったおかげで、 編み物は途中で止まったまま、今日も籠の中。 須賀敦子全集の三巻を手に取る。 目次をめくると、最初の章は 『…

Conquistate voi una stella in piu`...

|蹴球| トヨタ杯準決勝を観戦に横浜まで。 当面イタリアを訪れる予定の無いことなど考えると、マルディーニのミランを実際に観ることのできる、恐らく最後の機会と思う。同行者は、ミランと云うよりもピッポ狂の旧友Tちゃん、Tちゃんの同僚のN氏、チェルシー…

紙と鉛筆と線路

|日々| |音| 先日、ただ何とは無しに手に取った時刻表を 買い求めてからと云うもの、一旦ぱらりと始めたら これが非常に愉しくて、暇を見付けては読み耽る午後。 一日在ったら、何処まで行って帰ってこられるか。 桐生は完全に日帰り圏内。所用時間、約四時…

住む街

|本| |雑記| 盛岡の冊子 『てくり』*16号が届く。 東北のひとつの街の持つ空気、人、風景、手触り。 作り手の視線が街と同じ高さで、やわらかで。 盛岡と云う街への想いが、ちゃんとそこに在る。 栄えて居ようと居まいと、都市であろうとなかろうと、 何処…

留守にします

|日々| |音| 三日続きの休みの後は、丸一日がぽっかり空いて、 寒々しい曇り空は、秋と冬の間を行き来する。 午後三時をまわった頃。ドアに小さな張り紙貼って。 「四時半まで留守にします」 三人して、観光ピークの終わった秋の渓谷へ。 散策道手前の駐車場…

やわらかな金曜日

|日々| いつものよに窓を磨き、いつものよに床を掃き、 いつものよにサイフォンを準備し、 いつものよに店を開ける。いつもと同じ金曜日。 けれども、気持ちは少しだけそわとして、 背筋は少しだけしゃんとする。遠方より訪ねて下さった Tさんとご主人を、お…

寒空とポッケ

|日々| 「厳冬」と云う言葉は耳慣れしないが、どうりで寒い訳だ。 昨晩より、床の中に湯たんぽを使い始めた。ついでにと、 仕舞っておいた膝掛けも取り出すと、途端に部屋の中が 寒い季節の様相となる。冬支度が整うと、何故だか、 夜更かしがしたくなって困…

掌に残ったもの

|縷々| |本| 夕刻をもうすぐに控えた午後の西日が、角の丸くなった 全集の背表紙を包み込み、やわらかに歪んだ光が 全体に差し込むと、やがて陰りに追いつかれるまでの 僅かの間。刻はゆっくり光に溶け込んで、 段々に輪郭を曖昧にしながら、そこに在るもの…

私たちのフランチェスコも、丘を降りて行った。

|電視| |本| BS朝日にて、須賀敦子の 『イタリアへ』 が連続シリーズ となって放送されて居ることを知り、近頃新たにテレビを 購入した弟夫婦の家に、前もってお願いしておいた。 第1話のトリエステは、残念ながら逃したのだけれど、 第2話のアッシジは、H…

モンペ娘とべっぴんさん

|モノ| 先日の鎌倉散策の折に買い求めた、湯呑茶碗で白湯を飲む。 寒さが日に日に厳しくなって、体を冷やすまいと、 連日のよにガブガブ、お茶を飲みすぎたせいだろか。 胃液が薄まったのか、どうも胃の具合が芳しく無く、 なるたけ負担の少ない白湯ならば、…

鎌倉健脚探訪記

|散策| 飲食店組合の日帰り旅行、今年は鎌倉。普段は滅多に参加せぬよな顔ぶれも、ちらほら見受けられるのは、やはり企画が良かったからだろか。何しろ、清々した秋晴れに加え、前日の雨のおかげで、塵の掃われた空気はきりりと澄み、珍しく常磐道からも首都…

去る雨 残る雨

|日々| |本| 今日も今日とて雨が降り。 客席の配置替えしたのを、一夜明けてからしみじみ、 明るい中で改めて見てみると、何故だろか。 昨晩見たときよりもずっと、しっくりくる。 相変わらず雨は冷たく、降ると止むとを気まぐれに 繰り返しながら、時折お客…

日常の延長線上のささやかな非日常

|雑記| |本| 秋の日差し、やわらかな昼下がり。ふと、子供じみた愉しみを思い付く。 良く良く見知った、隣街に出掛けてぶらついて、日も暮れてきたら、宿をとって一泊、と云うのはどうか。地元でも、それなりにおもしろいかも知れないが、あんまり身近過ぎる…

鳥とほくとほく雲に入るゆくへ見おくる

|縷々| |音| つんと刺すよな冷たい空気が降りてきて、知らず知らず 肩をすくめては、両の腕をさすってしまう、帳の頃。 群青色した空に、真っ黒な山の輪郭がくっきり浮かぶ。 寒い寒いと無意識に呟きながら、濃い目の珈琲を淹れ、 落花生を器に一掴み。殻を…

無頼派の背中

|雑記| 例えば仕草だとか、喋り方だとか。 相槌の具合だとか、煙草の銘柄だとか。 静かで控え目な猫背だったり、或いは すっと通った孤高の背中だったり。 自分の佇まいや生き方を知って居て、 ずっと同じで、ころころ変わらずに、 けれどもそれが、ちいとも…

雨の日の人びと

|日々| |音| 郵便受けから新聞を取り出すにも、傘をささねばならぬ。 強い風に背中を押された雨は、勢い良く、寒々。 こんな土曜日は、大抵が緩やかに刻の進むものだ。 数こそ多くは無いけれど、雨の日に訪れるのは、 雨降りにだけ許される憩いを知る人びと…

嗜好の系譜

|徒然| |回想| ここ数年と云うもの 「四国へお遍路の旅に出たい。」 と口にすることの多い父だが、いざ実行に移すとなると、仕事を引退してからでなければ難しいことは、本人も承知して居る様子で、ただし自営業故、勤め人のよな決まった定年が無いために、…

やりとり

|縷々| 朝から、随分と薄ら寒い火曜日となった。 カーディガンを羽織って一日過ごす。 午後から降り出した雨もまた、細々と。寒々と。 待ちくたびれた季節に、そっと声を掛けようとも、 返事は無く。けれどもそれは、無愛想 と云う訳では無い。高飛車なので…

人は何故旅に出るのだろう

|雑記| |映画| どうやら知宏は、この中国の旅を最後、 旅人稼業に終止符を打つのらしい。 人は、帰るところが在るから旅に出られる、 旅を続けられる、と誰かが云って居た。 そもそも、旅とは何なのか…。 例えば、それが分からぬから旅に出るのが 理由なのだ…

溺れて眠れ

|縷々| |音| 暗がりの中で目を覚ますも、未だ朝は明けたばかり。 再び枕に顔を埋め、まどろみと現の境に、暫く 行きつ戻りつしながら、いつの間にか眠りに沈む。 日曜日が一体、何だと云うのか…。 次に目覚めたとき、私はそう呟いた気がする。 夢に何を見た…

ノスタルジアと秋の空

|回想| 子供の頃。毎年夏休みになると、母の妹である 叔母の所へ良く泊りに行った。家から四駅。 一人で電車に乗って。いっぱしの一人旅気分で。 叔母の家より歩いてすぐの場所に、こじんまりした 市民プールが在って、叔母と私、八つ下の小さな 従兄弟と三…

季節

|日々| |本| きのこ採り名人の叔父より、山のきのこは、 ヌメリササダケとアミタケの二種類。 掃除して塩水に浸けた後、大根、豆腐、茄子とで きのこ汁をこしらえる。とろりとしたきのこ汁から 湯気が立つと、ふんわり山の良い香りが。 ふうふう云いながら、…

消えゆく風景を想う

|電視| 先週末に録画しておいた『中国鉄道大紀行』春の旅編を、 小出しにしながら、少しずつじっくりと観て居る。 たとい未知の土地であっても、琴線に触れ、それに同調する 静かな興奮を感じるとき、私は或る種、郷愁にも似た 懐かしい気持ちを抱くことが、…

たそがれとしんみり

|映画| |散策| 久々に乗った電車は新しい型で、それが妙にモダン過ぎるのがいけないのか、どうにも居心地が宜しく無い。途中の駅からAちゃんが乗ってきて、各駅停車は小一時間程揺られて映画館へ。初回上映の割引を考えて午前中に出て来たのだけれど、受付で…

長袖歳時記

|日々| |音| |本| 肌寒い秋雨のそぼ降る木曜日。 起きてすぐ、朝の空気に季節の匂いをかぐ。 箪笥の中から、きつね色のコーデュロイのズボン、 長袖のシャツと、少し厚めの靴下を選んで出すと、 ほんの一瞬。秋の鼻先に手が触れた気がした。 重ね着。セータ…

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