双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

やわらかな金曜日

|日々|


いつものよに窓を磨き、いつものよに床を掃き、
いつものよにサイフォンを準備し、
いつものよに店を開ける。いつもと同じ金曜日。
けれども、気持ちは少しだけそわとして、
背筋は少しだけしゃんとする。遠方より訪ねて下さった
Tさんとご主人を、お昼を少しまわった頃にお迎えする。
互いの日記を行き来したり、文字のやりとりなど
しながら、やがて、実際にお会いする機会へと繋がって。
連休の初日の金曜日は、のんびりした表情の一日となり、
幸いなことに、Tさんたちの過ごされた間ずっと続いて、
夕暮れ前の西日の橙色も、お隣りさんからの借景も、
いつもと同じに其処に在り。ゆっくりお話などして居ると、
初めてお会いした方だのに、図々しくも古い友人のよな
心持ちになって、日頃目にする文章より感じる印象が、
ふとした拍子にそれと重なり、心地良くも不思議な感覚に。
帰り際、散策がてら歩いて帰りますので、と仰った、
さっぱりとしながら、ふんわりした佇まいの奥様と、
おっとり物静かなご主人の、お揃いの鞄を肩から掛けた
後姿を見送って居たら、胸の辺りがやわらかになった。
お二人が帰られて半時程経つと、先程までのぽっかり空いた
午後から一転。余韻に浸る間も無く、急にバタバタと
慌しくなって、気付けばとっぷり夜となって居り、
後片付けなどしながら、あの私の怪しい不案内で、
街場までお帰りになれたかしら、などと案じて居たの
だけれど、後に頂いた大変あたたかい内容のメールにて、
お二人が寂れ風情の我が街を、お二人の視線でてくてく
散策され、宵の頃の浜辺まで行かれたことを知る。
お土産の美味しいお菓子を、ちびちびとかじりつつ、
その微笑ましい情景を想い浮かべ、再び後姿を想った。

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