双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

爺ちゃん先生と赤ひげ先生

|雑記|


先月、かかりつけの医院へ目薬の追加を貰いに行こうとしたら、
先生が突然倒れて二月の末に閉院した、と聞き呆然。えーっ!
その少し後には、お外っ子お嬢でお世話になって居る赤ひげ先生が、
やはり突然倒れたとのこと、今月いっぱいで閉院すると聞いた。
えーっ!思いつく言葉が見当たらず、文字通り言葉を失う。

爺ちゃん先生の所では、お年頃に伴う不調やら季節のアレルギー等々。
こちらの云うなり…もとい、希望に沿って漢方薬を処方して下さり、
大変に助かって居た訳で、それ故ここと同じよな融通の利くお医者が
他に在ろう筈も無く、今後のあてが見付からず本当に心底困って居る。
嗚呼どうしよう。因みに、爺ちゃん先生の病状が如何様かと云うと、
二月の中頃に診て貰った時は、いつも通りの毒舌とつっけんどんで
相変わらずだったし、特に具合の悪いよには見えなかったのが、
既にステージ4の膵臓癌と聞いた。医者の不養生とは云うけれど、
まさしくそれを地でいった格好なのだった。或る意味先生らしいか。

一方の赤ひげ先生はと云うと、少し前から満身創痍が滲み出る感じで、
無理がたたらねば良いがなぁ…と不安に思うところが在った。
いつも忙しくひっきりなし。幾ら看護師さんの手際が良いとは云え、
先生の年齢を考えれば、相当にハードなのではなかったかと思う。
特に多頭飼いさんや個人ボラさんらにとっては、赤ひげ先生が
唯一の頼みの綱であったから、皆路頭に迷ってしまうだろなぁ。
お金は二の次、犬猫第一主義。野良っ子も区別なく診察してくれる。
こんな志の獣医はここいらには先生以外、誰も居ないものなぁ。
今月いっぱいは、知り合いの先生にお願いして週に一度、
ワクチン接種と既に予約の在った不妊手術のみ行うとのことだが、
閉院すると云うことは、先生の満身創痍ももう限界なのだろうし、
跡を継ぐ者が誰も居ないとすれば、やはり仕方のないことか。
しかし何より、赤ひげ先生の病状が心配である。


ここ数か月の間に、突然に、立て続けに、ふたつの灯が消えた。
小さい灯かも知れないが、決しておもねらぬ灯、良心の灯であったよ。
患者や飼い主がおかしなことを云えば厳しく叱り、
自らの評判だとか、人からどう思われるとか、一切気にしない。

外見は立派できれいで新しくて、耳ざわりの良いばかり、
どれも似たよな、薄っぺらなのばかりが残る。
嗚呼、こうして段々につまらなくなっていっちゃうなぁ。

爺ちゃん先生も赤ひげ先生も、長い間お疲れ様でした…。

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