|縷々| の検索結果:
|縷々| むわんとした風の中に、見上げた雲の様子に、 ほんの少しだけ秋の気配がまじってきて、そろそろ。いよいよ。 あんまりにも長く居座り続けた夏が、乾いた抜け殻を残して 去ってゆこうとしている。みっともない、悪足掻きしながら。そうして季節が入れ替わる準備をする後ろで、 身の回りに幾つかの切ない出来事を知る。 薄い色した雲の、薄く広がる空を見上げて、 目を瞑って、溜息をつけば遣る瀬無い。愉しいこと、嬉しいこと。 悲しいこと、切ないこと。 全部まとめて、秋の気配の中へ紛らしてしま…
|縷々| ここひと月ほど、実にヘビーな状況下に置かれて居る。 とは云っても、私自身がヘビーな訳ではない。 近しい人が深刻にヘビーな状況にあって、何とか助けようと 懸命に試みて居るのだが、依然として事態動かず。 結局、何もできずに只見て居るしかできぬ状態が、 如何ともしんどくて悔しくて、それでヘビーなのである。毒親だとか毒母だとか。大変に嫌な言葉と思うけれども、 その類の親が世の中に存在することは知っては居るし、想像に難くない。 長いこと自身にも身近にも関わりのない事柄であった…
|縷々| ひとが生きてりゃ、いろんなことが在る。 たったひとりで何がどれだけできるだろか。 ひとりでできることなんざ、たかが知れてるんだから。 ひとりじゃないよ。ここに居るよ。 いつだって助けるし、支えるよ。人間はつくづく出来の悪い生き物だけれど、 悲惨過ぎて、もう笑うしかないな、だなんて 悲惨をユーモアに変換できるのは、実に人間だけなのだ。 これって、結構すごいことなんだよ。 駄目でも、足りなくても良い。いびつで構わない。 私に在ってあなたに無いもの、あなたに在って私に無い…
|日々| |縷々| ここのところ、なんだか調子がおかしい。具体的に何がどうおかしいのかは分からない。単純な凡ミスの頻発に、うっかり忘れ。気の焦り。同時に幾つかの物事をこなすことができない。いつもならどうと云うことの無い事柄に、つまづいたり引っ掛かったりして、その度に調子が狂ってゆく。頭にも心にも、余裕が、余白が無い。季節の所為も在るだろうし、年齢的なものも在るのだろう。いずれにせよ疲れて居るのか。 そんな風に余裕が無くて、自分のことすらままならないから、ひとのことも気遣えず、…
|縷々| |音| 二月は色々な意味で心身共にしんどい月だった。もう散々な感じだった。 確定申告でキリキリして、早々に花粉が飛んで、過活動シニアらの不躾に疲弊して、 すっかり当てが外れて、引っ掻き回されて、謂れの無いこと云われたりして。 右も左も理不尽ばかり。正直に真面目にあって馬鹿を見るのなら、 軽薄で不真面目にある方がずっと上手くやれるのだろか。 つくづく遣る瀬無い。そんなこんなで二月からずっと調子が戻らずに居て、 どうにもこうにもにっちもさっちもいかず、かと云って、 コノ…
|縷々| つい先週あたりまでは、十一月の勢いを引きずった格好で、 例年よりも良い具合に活気が在ったのであったが、 いよいよここへきて失速、急にすとんと暇となってしまった。 ついでだもの、今月いっぱいは忙しくても良かったのになぁ。 年末の掃除には丁度かな、と開き直って窓拭きだの換気扇だの。それにしても、近年の巷のクリスマス色の薄さときたら。 大型小売店も商業施設も、それらしきはBGMくらいのもので、 既に正月関連が優先だったりと、何やらひどく寂しい塩梅であった。 いつ頃からかな…
|縷々| ここのところ、ずっとハイペースな具合で日々が廻って居て、 それはそれで実に結構なことであり、不満も何も無いのだけれど、 でも、ちょっとだけふうっと息をつきたい気もするなぁ... などと、虫のいい考えが湧きあがったところへ、 絶妙にぽかんと暇がやってきて、 ふむ、良いのだか悪いのだか。 意図せず、良い塩梅にひと休みが叶ったのであった。今にも降り出しそな、湿り気を含んだ曇天の午後。 小さな贈り物へ添える言葉を一筆箋に書き終えて、 串団子をひとつ頬張り、久々の穏やかな心持…
|縷々| 父方のT叔父が亡くなった。 十年前に大腸癌の手術をして、その三年後に今度は肝臓に癌が見付かって、 数年の余命を告げられながらも、憎まれっ子何とやらを地でゆく格好で、 何だかんだ、余命よりもずっと長く生きて、そして逝った。父の男兄弟の中で一番下のT叔父は、やんちゃで愉しい叔父だった。 婿養子に行った先で、姑にぎゅうぎゅうとやられた所為か、 歳を重ねるごとに僻みっぽくなった気もがするが、 根は寂しがり屋だったから、口で云う程のものじゃなかった。 癌が分かってからも、煙草…
|縷々| 五月晴れの土曜日の昼下がり。びゅうと強い南風に乗って、 Tさんご夫妻が遠方より訪ねて下さった。お会いするのは実に七年ぶり。 嬉しいのと切ないのと色んなのが、ぶわあっと一緒くたで胸がいっぱいになる。経過した月日はコロナ禍と云う大き過ぎる空白を挟んで、 実際よりもずっとずっと、長く遠く感じられて。 七年間の中にそれぞれの七年分の出来事が在って。 しんどかったり重たかったり。 ままならぬ苛立ちや落胆に心をすり減らしたり。 恐らくは、あんなことも在った。こんなことも在った。…
|縷々| |雑記| 昼時の忙しさが一段落して洗い場を片付けて居たら、カウンターの方から声がして「こんにちはー」と覗き込む人が在る。「はーい」と出ていくと、ひょっこり、懐かしい顔が見えた。あらー、誰かと思えばY君じゃないの! 細長い輪郭にきょろっとしたまん丸の目。頬の辺りは少しだけふっくらしたけれど、そこに立って居たのは紛れも無い、Y君その人であった。「すごいなあ、すぐ分かりました?」そりゃ分かるわよ、全然変わらないものー。「いやぁ、僕のこと憶えててくれたんだ」当たり前でしょ、…
|縷々| |音| 死の気配に包まれて居た人の訃報は、突然の不意の訃報よりも、重たい。 重たいけれど「遂にその時が来てしまったのだな」と、 遠からず訪れるのだと云う、確かな予感みたいなものに先導されて、 思いの外、動揺せずに事実を受け入れられるよな気がする。 ただ、その死によって、自分の中で (自分でも意外なくらい) 大きな存在であったことを、改めて知ることになろうとは。 今年の一月に観たその人の骨ばった指先は、静かに命を削りながらも 一音一音を慈しむよに、静寂の中で、美しい音…
|縷々| |音| 嗚呼。あの人もこの人も。 若き日に憧れた「かっちょいい大人」が皆、次々と鬼籍に入ってゆく。 いつの間にか、私自身が当時の彼らの年齢を追い越し、 「かっちょいい大人」は「かっちょいいじじばば」となって 皆、最終出口行きの列車に乗って行った。 近頃よくこの曲を口ずさむ。 「老いる」と云うこと。 生きることは、死に向かって進んでゆくこと。 その先が”出口”なのかな。
|縷々| 先週の始め、四つ下の従弟があっち側へ行ってしまった。自ら選んだ死だった。 体も心も満身創痍の状態が何年も続き、もうこれ以上は無理だったのだろう。 馬鹿ヤロウ。一人で行っちまいやがって。自分だけ先に楽になりやがって。 残って生きる者は。生きるってのは。面倒くさくて、ずっと辛いばっかりなんだよ。 葬儀の後、仲間と散々憎まれ口をたたきながら、しかし心の真ん中ではこう思う。 こんな別れ方はしたくなかったし、悲しくて悔しくてどうしようもないけれど、 長い間苦しかったんだろう。…
|散輪| |縷々| 鉛色の空はどこまでも曇天。風は冷たく、一旦は躊躇したものの、午後には日が射すと云うので、10時50分。グワイヒア号と共に出立し越境、海沿いの旧街道を経て22キロの道を行く。休憩無しの一時間と少々で馴染みの喫茶店へ到着。ピザトーストと珈琲の昼食に、もう一杯珈琲をおかわりして、ゆったり寛いだ後、再び寒空の下へと戻った。本来であれば年配のお客さん方で賑わって居る筈の時間帯だのに、一体皆何処に居るのだろ。めずらしいくらいにひっそりとして居たな。前回来た時もそんな風…
|日々| |縷々| 午後。仕事が一段落してから、自転車(古森号)で郵便局へ。 郵便を出し、払い込みを済ませて表へ出たところで、ふと そのまま帰るだけなのが惜しくなって、も少し走りたいな、と思った。 微かに息苦しいよな、塞がった感じがずっと拭えずに居たのだ。郵便局を出て、表通りから細道、団地の中へ入る。 ひんやりした秋の風を体の前面で受け止めながら、ぐるり、 人っ気の疎らな団地の外周に沿って大きく走る。風がゴーと鳴る。 こんなひとっ走りには、小回りがきいてきびきび軽快な古森号が…
|縷々| |散輪| しくじった。恐らく、魔が差したのであろう。我ながらみっともない愚痴を、間違った相手に吐露して後悔する。どうしてああ云う人にあんな話をして聞かせたのか。精神が余程に疲弊していたのか、全く「魔が差した」としか云い様が無いのだけれど、後悔先に立たず。過ぎたことはどうにもならぬし、今後同じ過ちを繰り返さない心得で、さっさと気持ちを切り替えよう。やれやれ。明けて月曜日、外は曇天。予報では雨は降らぬらしいし、ひとっ走りして気晴らしして来るか。支度して十一時半にグワイヒ…
|縷々| |回想| エリザベス女王の崩御以降、若い頃に渡英した際のあれこれを、日々思い出して居る。 否、正確には自らの意思とは関係なく、ぶわーっと記憶が蘇ってくる感じだ。90年代に三回、イギリスとスコットランドを旅した。何れもロンドンを拠点とした滞在で、バッキンガム宮殿の辺りも頻繁に歩いて居た気がする。女王に対しての個人的な想いどうのこうのと云うよりかは、自分にとって最もエネルギーに溢れ、興味の趣くままに歩き回り、吸収し、かけがえのない経験を積んだ時代に、間違い無くその大きな…
|縷々| 八月に入って連日の猛暑。暑い、と口にするのもいい加減にうんざり、 辟易とする日々が続くうちに、気持ちは在れども行動に移せない。 先へ進まねばならぬのに、歩みが重たくてちいとも前に進めない。 差し詰め心と体が上手く繋がらぬよな、鈍いもどかしさに捕らわれて、 只ずるずると一日一日を引き摺りながら、無為に過ごして居る。 容赦の無い炎天下に自転車を駆る気も削がれて、素麵をすする。お盆の乗り物を拵えようと野菜の籠を探れば、あらら。 茄子も胡瓜も馬鹿みたいに大きくて、どうにも上…
|日々| |縷々| 今朝目が覚めて、大きく両腕を伸ばしてググーッとやったら、 件のリンパ節の腫れと痛みが、幾らかひいて楽になって居た。 そうか。一晩の間に決着が着いたのだな。 人の体の中で起きて居ることを、実際に見てみたいものと思う。 日中はお天道様が出てうららかだったのが、午後三時を過ぎたら すとんと様子が変わって、さめざめとした寒さが戻って来た。 暗くなる頃には、雨。こうやって、春が進んでゆくのだ。もう数日もすれば、新型某云々の措置が解除となる。 少しで構わぬから、重たい…
|縷々| |日々| 暦の変わった途端に春が来たものの、一旦は仕舞ったカーディガンを 再び引っ張り出して羽織って居る。概ねそんなものだろう、と受け入れる。 今回の新型某禍の措置云々は、幾度も幾度も引き延ばされながら続き、 さすがにこれだけだらだら引き延ばされると、もうこのままずっと 終わらずに続いてゆくのじゃないか、などとおかしな心持ちになってくる。 こんなにも人の心を鈍く麻痺させる。まったく、本末転倒じゃないか。うすぼんやりと濁ったよな、間延びしたよな日常が流れ、続いて居る。…
|縷々| 日めくり暦を横から見たら、もうこんなに薄くなって居て、 そりゃあそうだ。だって、もう師走だものな。気が気でなかった毎年恒例十一月の狂騒月間については、 それなりに忙しかったものの、幸い心得たお客さんが殆どだったから、*1 いつものよな白目にもならずに済み、良い意味で拍子抜けであった。 ほっと安堵して十一月を仕舞い、迎えた十二月。 小さなクリスマスの置物など控えめに飾る。少しずつ動き出した日常が、再び足踏みを余儀なくされ、滞る。 深く溜息をつき、暫くして「えいっ!」と…
|縷々| 気付けば始まって居た十月が、気付けば去ろうとして居る。 秋とは呼んでも、名ばかりの。 半袖とカーディガンの間で右往左往し、 何とぼやけた、何と無粋な、十月であったか。 それがどうだ。数日の間に、急いてたたみかけるが如く。 窓枠の金属に触れる指がひんやりとしたもので、 慌ててカーテンを地厚の秋冬のに、かけ替えた。 夜具は少し前、フランネルのを出して替えたけれど、 是では毛布も足さねば、心許なくなってきたなぁ。 やれやれ。 何処も彼処もちぐはぐで、移ろいも何もあったもの…
|縷々| 畑で採れたばかりの玉蜀黍と胡瓜と大葉の刻んだので、さっぱりした酢の物拵えて、 モロッコインゲンは天ぷらに。鍋へ湯を沸かし、ほどいた素麺を茹でる。 夏の日差しの中に浮き上がって、暇になってぽっかり、空っぽの午後。 黙々としみじみと、咀嚼しながら、視線の先にかかった潾二郎の絵を眺めて居る。 イガイガささくれだった心が、すうと平らかになってくる。 とても律儀だけれど、やわらかな筆づかい。 大事に大事に描かれた、やさしい線。 長谷川潾二郎『猫』(1966) 日曜予定朝六時起…
|縷々| |音| 今でも鮮明に思い出せること。ぼんやりと朧気にしか思い出せないこと。 石油ストーブのあったかさと。真っ暗闇の中の不気味なくらいの静寂と。 アーロンが窓から屋根に飛び出して、おろおろして鳴いて居たのだったな。 今年よりも、もっとずっと寒い、冬みたいな春先だったな。十年前の今日と同じ時間に、カウンターの内側で目を閉じて、暫しの黙祷。 ぽつりぽつり。 午後のお一人様たちの、粛々と憩う様にほっとする。 この場所が、この人たちの心の寄る辺で在り続けられますように。 どん…
|雑記| |縷々| 予定より早く短縮営業要請が終わり、店に夜が戻ってきた。 戻ってきたのは時間だけで、客足は未だ足踏みであるが、 夕刻以降に訪れる一人客の方々が、徐々に戻ってくれたら嬉しい。 そう云えば、風の無い夜は、久しぶりの気がする。 小瓶に活けた可憐な水仙が、ふわっと香った。春遠からじ。ここひと月以上、碌に体を動かすことをして居らず、 節々やら筋肉やらが固まってしまい、どうにも鈍くぎこちない。 一月から休みだった太極拳の稽古は、ようやっと来週に再開するので、 その前に少…
|音| |縷々| 十二月に入った途端、急に静かになったなぁ、と感じ入る。 こないだまでの紅葉狂騒曲がぱたりと止んで、人と車の姿が消えて、 それと入れ替わりで、季節がきんと冷えた空気を連れて来た。鼻から深く吸い込んだ息を、ゆっくり全部吐き出す。 肺の奥がひんやりとして、清々しくて、気持ち良い。 嗚呼、冬だ。 これは紛れも無く、冬の感触。冬の様相だ。ストーブを背にして、落雁をかじりかじり、熱いミルクティーを飲む。Charlie Brown Christmasアーティスト:GUAR…
|縷々| ざっと掃除を終わらせて郵便受けを覗きに行くと、 バラ苗を購入している農場から、今年のカタログが届いて居た。 丁寧で誠実な姿勢と仕事ぶりは苗にそのまま映されて、 それはカタログの紙面からも、十分に伝わってくる。 困難のほうに目を向けますと、世の中には怖いことや悲しいこと、辛いことが多すぎると感じます。このようなときに心を明るく保つことは、非常に難しいことです。 皆が必死に生きる道を模索する中、わずかな希望に小さな明かりを灯しつつ歩む、その道がどうか守られますように。 …
|縷々| 数日前から、また保坂和志の『ハレルヤ』を読んで居る。キャットタワーの箱の中から、花ちゃんの叫んだ「キャウ!」には、 先に旅立ったペチャもジジもチャーちゃんも皆が加わって居て、 それは”生きている”ものと”死んでいる”ものとが共鳴し合った 「すべての始まりの合図」であり「流れていた時間を断ち切って、 過去とか現在とか未来とか関係なくしたということ」なのだと。 頁をめくっては戻りして、同じところを繰り返し読みながら、 そうして、やっぱり分からなかったり、あ。そうか、と思…
|縷々| |庭仕事| 新芽は健やかに育ち、やわらかな若葉の各々の佇まい。 巨大な閉塞感の中へ埋もれてしまわぬよに。 窮屈さに押されて、いがいがと荒んでしまわぬよに。 庭に立って花柄を摘み、土を掘り、水をまく。 思慮分別を忘れず。日常から離れず。 日々を坦々と、暮らす。
|本| |縷々| 家と庭と犬とねこ作者:石井 桃子発売日: 2013/05/23メディア: 単行本(ソフトカバー)ここに書かれたことの殆どは、戦後間も無しのことだったり、その後の経済成長期のことだけれど、物事の本質や心の在りように時代は関係無いのだな、としみじみ思う。そして、社会の構造のよな部分も、びっくりする程に様変わりしたり、天井と地面とがひっくり返ったりと云う訳でも無い。 桃子先生が東京と山の家とを頻繁に行き来しながら、山での共同生活を支えて居た頃の、都会の食料や経済の…