双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

十月逍遥

|日々| |縷々|


午後。仕事が一段落してから、自転車(古森号)で郵便局へ。
郵便を出し、払い込みを済ませて表へ出たところで、ふと
そのまま帰るだけなのが惜しくなって、も少し走りたいな、と思った。
微かに息苦しいよな、塞がった感じがずっと拭えずに居たのだ。

郵便局を出て、表通りから細道、団地の中へ入る。
ひんやりした秋の風を体の前面で受け止めながら、ぐるり、
人っ気の疎らな団地の外周に沿って大きく走る。風がゴーと鳴る。
こんなひとっ走りには、小回りがきいてきびきび軽快な古森号が良い。
何も聞かずに頷いて、いつだって気やすく付き合ってくれる。
団地を駆け抜けて馴染みの田んぼ道に出ると、向かい風が強い。
互いに調子が出て来て、短いくねくね坂を一つ、立ち漕ぎで一気に登った。
三キロくらい走って遠回りして帰って来たら、少しすっきりして、
ま、いいか。なるようになるさ。と、そう思えるよになって居た。


挿し木のオールドローズに蕾がついて、一輪だけ秋の花が開いた。
掌で包んで温まると、品の良い深い香りがすうと静かに立ちのぼる。
十一月がすぐそこまで来て居る。


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