双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

「サヨナラ」ダケガ人生ダ

|縷々|


先週の始め、四つ下の従弟があっち側へ行ってしまった。自ら選んだ死だった。
体も心も満身創痍の状態が何年も続き、もうこれ以上は無理だったのだろう。
馬鹿ヤロウ。一人で行っちまいやがって。自分だけ先に楽になりやがって。
残って生きる者は。生きるってのは。面倒くさくて、ずっと辛いばっかりなんだよ。
葬儀の後、仲間と散々憎まれ口をたたきながら、しかし心の真ん中ではこう思う。
こんな別れ方はしたくなかったし、悲しくて悔しくてどうしようもないけれど、
長い間苦しかったんだろう。ようやっと楽になれたか。心静かになれたか。
好きなものを好きなだけ食べて、誰に忖度も遠慮もせず、自分勝手にしろよ。
死に顔は拍子抜けするくらいに、柔和で穏やかだった。


訃報の知らせを受けた月曜の朝は、すぐには事態がのみ込めず、しかしながら
心当たりが全く無い訳でも無く、だからこそ余計に遣る瀬無さでいっぱいになった。
親族は皆さすがに、叔父から招集がかかるまでは顔を出せなかった。
家に一人で居たくなくて、雨の上がったばかりの県道に自転車を隣町まで走らせた。
神社へ寄って、何をお願いするでもなくただ柏手を打ち、賽銭を入れた。
帰り道の路肩でふと自転車を止めると、目の前の小高い森はすっかり晩秋の佇まいで、
何とはなしに写真を撮った。撮り終わって暫し、放心してひとり突っ立って居た。


「サヨナラ」ダケガ人生ダ。

さらば Tよ。
我々はまだあと少し、こっちでジタバタするからさ。

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