双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

二月雑感

|雑記| |縷々|


予定より早く短縮営業要請が終わり、店に夜が戻ってきた。
戻ってきたのは時間だけで、客足は未だ足踏みであるが、
夕刻以降に訪れる一人客の方々が、徐々に戻ってくれたら嬉しい。
そう云えば、風の無い夜は、久しぶりの気がする。
小瓶に活けた可憐な水仙が、ふわっと香った。春遠からじ。

ここひと月以上、碌に体を動かすことをして居らず、
節々やら筋肉やらが固まってしまい、どうにも鈍くぎこちない。
一月から休みだった太極拳の稽古は、ようやっと来週に再開するので、
その前に少しでも、眠った体を動かしておかねばな。
マスクを外し、胸を開こうと目一杯深く呼い込んだら
余程に肺がなまって居た所為か、思い切りゲボゲボとむせた。
健康を維持できて居る間は気が付き難いけれど、
衰えさせるのに時間は要らない。実に容易いものである。


世の中の速度が早過ぎると感じて居た。昔から、ずっと。
巻き込まれぬよに、呑み込まれぬよに。気を張ってきた。
けれど、新型某禍が世の中に減速を余儀なくしたことで、
皮肉にも、私が息苦しさを感じることは、次第に減った。
まったくおかしなものだ。

その内に。一年だとか二年だとかが経って、
世の中全体が再び動き出して、それがすっかり当たり前になれば、
私にとって程好かったこの速度も、きっと遥かの後ろの方へ
置いて行かれてしまうのだろな。そんなもの端から無かったみたいに。
いつだって、そうだった。昔から、ずっと。

そんなことなど、ふと思う、二月の末である。

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