双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

四月逍遥

|雑記|


◆しばらく途絶えてしまって居た音信が気にかかり、思い立って旧長屋時代のご近所さんだった方へ数年ぶりに便りを出した。もしかしたらご迷惑だったかな…と半分諦めて居たのだけれど、二・三週間程が経った頃だろか。郵便受けに絵葉書が届いて居た。余白いっぱいに特徴の在る懐かしい筆跡が躍り、彼女らしいお茶目なイラストが添えられて。近況報告に愛猫の病のこと。いつもより少し寂しい春、と綴りつつも最後に「元気です!」と在って、ほっと安堵した。しみじみと嬉しかった。お便り、出して良かったな。


◆先週、お外っ子のお嬢が急に膀胱炎となり、一先ずは常備の猪苓湯で様子見したものの、閉院までは薬だけ出して頂けるとのことで、赤ひげ先生の所へ電話。翌日に先生不在の赤ひげ医院を訪ねると、丁度奥さんと娘さんが入院先から戻ったばかりのところであった。お話によれば先生は脳梗塞で倒れられたとのこと。現在は意識も戻って容態も安定し、徐々に会話や食事ができるよになって居ると云う。嗚呼、良かった。ご家族の皆さん、くれぐれもご無理なさいませんように、と気持ちばかりの差し入れを渡し、お嬢の薬を受け取って外へ出ると、同じく薬を取りに来たのであろう飼い主さん方が、やはり手に差し入れの袋を持って待って居た。皆其々に思いが在るのだな。先生や奥さんの人徳と姿勢。


◆その数日後。知人の話で爺ちゃん先生が四月に入ってすぐに亡くなられたと知った。倒れる直前まで仕事して居て、倒れてひと月余りで逝かれた訳で、何と云うか、すぱっとして潔い様が本当に先生らしいなと思った。死に様って、人となりが出るものなのかも知れない。


◆新緑の季節の足音と共に、Tさんから嬉しいお知らせが届いた。旧長屋時代からの長いお付き合いのご近所さん。久しぶりに訪ねに行くよ、って。コロナ禍の僅か数年間の空白が、それ以前に在った筈の時間を、事柄を、もうずっとずっと前の遠い日のことのよに感じさせてしまう。何倍も長く感じさせてしまう。近頃ふと湧き上がるその感覚が、ひどく切なく思えることが在る。でもきっと実際に合って互いの顔を見てお話したら、空白で歪んだ時間感覚はすぐに元へ戻る気がするのだ。たのしみでそわそわでわくわく。


◆連休中、隣県の美術館へ遠出しませんか?とのお誘いを受けるも、聞いたら印象派展とのことで、むむぅ食指動かず…(笑)。丁重に遠慮申し上げる。否、決してモネとか印象派がいけないのじゃないんです。単に私個人の偏った趣味の問題なんです。

<