双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

プロシュッティ先生のパスコリ

|日々|


今日は冬至だから、夜にはロウソクでも灯そうかしら。
などと考えもしたけれど、ゆく人も車の気配も
まったく希薄なものだから、誰も居ないところで
ロウソクを灯したりしたら、何だかかえって
寂しくなりそな気がして思いとどまった。
一体、人びとは何処へ隠れてしまったのだろ。
この時期は恐らく皆、忘年会などに忙しくて、
茶店でのんびりどころでは無いのだろな。
それにしても冷え冷えと、ひどく静かな夜。
表が暗くなってからは、編み棒を動かしたり、
それに疲れると、本をめくったりして過ごす。
街灯でも無ければ、本当に真っ暗な外。
其処にぽかんと灯りをこぼす、この場所は何だか
沖合いに浮かんだ、一隻きりの小さな釣り船みたい。
静寂と背中合わせの、心もとない寂しさ。


湯船に柚子を一つ浮かべて、肩まで浸かる。

月はどこだっけ? 明けゆく
真珠色のなかで、 空はたしかに見えていた。
アーモンドとリンゴの木が、 もっとよく見ようとして
すらりと伸びたかにみえた。
ずっとむこうの雲の暗さから、
稲妻が風に乗ってくる。
そのとき、 野良から声がひとつ。
キウ…


           ― ジョヴァンニ・パスコリ 『アッシオーロ』 ―

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