双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

モンペ娘とべっぴんさん

|モノ|


先日の鎌倉散策の折に買い求めた、湯呑茶碗で白湯を飲む。
寒さが日に日に厳しくなって、体を冷やすまいと、
連日のよにガブガブ、お茶を飲みすぎたせいだろか。
胃液が薄まったのか、どうも胃の具合が芳しく無く、
なるたけ負担の少ない白湯ならば、と思った訳なのだが、
磁器の湯呑でたまに飲む白湯は、舌にちりりととがり、
何やら、江戸っ子が顔も体も赤くして、やせ我慢して
熱い風呂に浸かって居る風で、当然味も素っ気も無く、
白湯などと云うものは概ねそんなもの、とばかり思って居た。
ところが、この陶器の湯呑の白湯はどうだろう。
ちいともぴりっとせず、程好く角がとれて丸くなって、
まろやかでやわらかで。掌で囲うと、内側より仄かに
じんわりとしてくるのも、信楽焼のたぬきの腹にも似て、
真ん中だけが、ぽこりとして居る佇まいも良い。
民芸の生活雑器の佇まいは、決して垢抜けたものでは無い。
けれどその垢抜け無さが、何処か田舎のモンペ娘みたいで、
何とも味わいのあるものだから、毎日見て居っても
使って居っても、不思議と飽きることが無い。
たまの贅沢なら兎も角、大層手の込んで豪華な料理は、
毎日何度も食べたいとは思わないのに、季節の菜っ葉の
おひたしだの、漬物だの味噌汁だのなら、毎日毎食でも
飽きることが無いのと、少しだけ似て居る気がする。
決してべっぴんでは無いけれど、素朴なかあいらしさ漂う、
おさげ髪のモンペ娘で、今日はいつもよかちょっと甘くした
ココアを飲んだ。一口飲んで、少しおいてまた一口。
疲れた体にじんわりし沁み込む、やさしい味がした。

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