双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

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どこもここも、しんみりとしてきたのです。

|本| |縷々| ムーミン谷の十一月 (講談社青い鳥文庫 (21‐8))作者: トーベ=ヤンソン,Tove Jansson,鈴木徹郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 1984/10/10メディア: 新書購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見るさめざめと雨が降ってきて、午後はすっかりひそりとして。 そのまま、冷たい墨色の夜になる。 生姜のクッキーと熱いお茶。ぽつんと独りの安らかさ。 自分の持ちものを、できるだけ身ぢかに、ぴったりとひきよせるのは、な…

ちくり

|縷々| |本| 蟋蟀の鳴く声。夜も涼しくなると、窓の外から。 知らぬ間に重なって居た、憂いと煩いの澱。 ぼんやりの夜の掌から、不意に差し出されて、 何処かがちくりとする。鈍く広がる。 気付いて居なかった訳ではない。 気付かぬふりをして居ただけ、か。 ぬるい茶を一口飲んで、独り言つ。 まぁ、良いさ。悪足掻きは止そう。 待つことでしか、成せぬときもある。 内田百間―イヤダカラ、イヤダの流儀 (別冊太陽)出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2008/08/01メディア: ムック …

言葉の舟を漕ぐ

|縷々| 何処かの街の広場に沿った回廊。ぐるりの柱に もたれるのは、鳶色の髪の少女だろか。少年だろか。 私の視線は、俯瞰となって注がれて居り、 ああ、これは夢なのだな。と知る。 未だここは、夢と現の境目に近い。 枕に埋めた頬の上側に、ふわりとした尻尾の 微かに触れる感覚が在り、それは間も無く 夜具で覆ったふくらはぎに、とすんと身を横たえた。 現の遠くに、乱暴な雨音を聞きながら、 瞼の重さに抗わず、眠りを受け入れると、 意識は朧に、深いところへ、ゆっくり沈んだ。 小さく開けた窓…

訪問者

|縷々| 秋や冬、寒い季節の甘やかな感傷とも違う。 夏に感じるそれは、重たい湿り気を含んだ、 鬱々とした虚無に似て、寝苦しい寝台の中で 鈍重に纏わりつき、なかなか解放してはくれぬ。 そんなとき、私の志は、ひどく脆いよに想われる。 確かに、己の歩みを見付けた筈だのに、ひと度 夏のそれに捕われてしまうと、次第にぐらり揺らいで、 仄暗い水底へ、ずるり引っ張られてしまう。 水底から水面を見上げ、身動きも取れぬまま、 ただ、ゆらゆらと寝台に沈んで居るよな心地で、 朝の訪れすら、疑いなが…

木曜日の隙間からこぼれ落ちる一粒

|縷々| |音| 淡々と とつとつと こぽこぽと しゅうしゅうと パラパラと トントンと かたかたと かりかりと 気忙しさの輪から ぽんとはじき出されて こぼれ落ちて 残されたのは 日々の感触 日常の音たち [木曜日 隙間の一枚] Sonアーティスト: Juana Molina出版社/メーカー: Domino発売日: 2006/06/06メディア: CD購入: 2人 クリック: 15回この商品を含むブログ (50件) を見る

一握の砂塵の如き午後がするりとすべり落ちる

|縷々| 不確かな手触りと、薄くて遠い匂いと。 まろやかな日だまりの均衡が静かに傾いて、 やがて仄暗い翳りを落とすと、重たくひんやりした 夜の気配が、足下にうっすら、溜まり始める。 日曜日の名残りは寄る辺無く、境目の曖昧な 季節と季節の間に、ひっそり漂いながら、 納まりのつく場所を探すのだろか。 うつらうつらとして、夜に引っ張られる。

Cucurrucuru Paloma

|縷々| |音| 穏やかに過ごせたかと思えば、どんよりと 気の滅入るよなことも在るのが、世の常。 考えはぐるぐると頭を巡って、再び最初へ。 今の自分に出来ることと、出来ぬこと。 見たくない、知りたくないものたちに、 あえて気付かぬふりをして居たり。 ほんの束の間、ざわざわとした煩いから 遠ざかったら、また戻って来よう。 [夜の部屋の一枚]See You on the Other Sideアーティスト: Mercury Rev出版社/メーカー: Beggars Banquet発…

日々徒然

|縷々| 縷々と流れては、遅々と進まず。 諦めて放り出せば、糸の端は残り。 するりと掌からこぼれ落ちて、再び 帰って来るもの。もう戻らぬもの。 日々は流離い、繰り返す。 昨日と今日。 今日と明日。 建てつけの悪い引き戸みたいに、 ぎこちない音たてて終わる一日。 冬の乾いた空気に背筋をのばし、 新たな朝を、深々と吸い込む一日。 些細と深淵と。 縷々と遅々と。 日々の徒然。

薬缶の湯

|縷々| 冬の一日。 時間の流れは、滞るよにゆっくりと。 日々を紡ぐことを厭わず。 ただ、其処にあるものを迎え入れ。 切りの無い欲目に無頓着であれるよに。 小さき気配に敏感であれるよに。 金銭で得られる豊かさが、決して 豊かさの全てでは無く、むしろ 金銭で得られぬものの中に、愛すべき ささやかな事柄が在るのだ、と。 日々の暮らしを丁寧に、正直に。 高望みも贅沢もせず、清貧であれたら。 仕事の合間に針持つ手、動かしながら ふと、そんなことなど想う。

Trieste

|縷々| 街を、橋から端まで、通りぬけた。 それから坂をのぼった。 ます雑踏があり、やがてひっそりして、 低い石垣で終わる。 その片すみに、ひとり 腰をおろす。石垣の終わるところで、 街も終わるようだ。 トリエステには、棘のある 美しさがある。たとえば、 酸っぱい、がつがつした少年みたいな、 碧い目の、花束をおくるには 大きすぎる手の少年、 嫉妬のある 愛みたいな。 この坂道からは、すべての教会が、街路が、 見える。ある道は人が混みあう浜辺につづき、 丘の道もある。もうそこで…

掌に残ったもの

|縷々| |本| 夕刻をもうすぐに控えた午後の西日が、角の丸くなった 全集の背表紙を包み込み、やわらかに歪んだ光が 全体に差し込むと、やがて陰りに追いつかれるまでの 僅かの間。刻はゆっくり光に溶け込んで、 段々に輪郭を曖昧にしながら、そこに在るものの感覚を とろり、鈍らせる。あたたかな、薄ぼんやりした 橙色の時間の欠片をひとつ、切り取ってポッケにしまう。 夜の更けた頃に思い出して、それを取り出してみたけれど、 差し入れたポッケの中はひどく、ひんやりとして、 切り取った筈の橙色…

鳥とほくとほく雲に入るゆくへ見おくる

|縷々| |音| つんと刺すよな冷たい空気が降りてきて、知らず知らず 肩をすくめては、両の腕をさすってしまう、帳の頃。 群青色した空に、真っ黒な山の輪郭がくっきり浮かぶ。 寒い寒いと無意識に呟きながら、濃い目の珈琲を淹れ、 落花生を器に一掴み。殻をむいては口に入れ、 ぽりぽりかじって、珈琲の入ったカップに手を伸ばす。 しんとした店内に、かさかさ乾いた落花生の音。 気が付けば、器の中は殻ばかり。 [金曜日の一枚] This River Only Brings Poisonアーテ…

やりとり

|縷々| 朝から、随分と薄ら寒い火曜日となった。 カーディガンを羽織って一日過ごす。 午後から降り出した雨もまた、細々と。寒々と。 待ちくたびれた季節に、そっと声を掛けようとも、 返事は無く。けれどもそれは、無愛想 と云う訳では無い。高飛車なのでも、 冷たい訳でも無い。言葉交わさずとも、 心に留めるべきものは、ちゃんと受け取った。

溺れて眠れ

|縷々| |音| 暗がりの中で目を覚ますも、未だ朝は明けたばかり。 再び枕に顔を埋め、まどろみと現の境に、暫く 行きつ戻りつしながら、いつの間にか眠りに沈む。 日曜日が一体、何だと云うのか…。 次に目覚めたとき、私はそう呟いた気がする。 夢に何を見たのか、殆ど覚えては居らぬけれど、 寝床を這い出してから一日を終えるまで、 寝言とも何ともつかぬ、今朝方の呟きのことなど、 すっかり忘れてしまって居たのを、今しがた、 遠く思い出した。ただ、それだけのこと。 [日曜日の一枚] Giv…

名も無き砂塵の一粒を

|縷々| |音| 晴れ間から零れ落ちる細い雨は、途切れ途切れに。 間隔を置く内に、気が付けば通り過ぎて居り。 夜になると車の往来は減って、街灯の橙の照らす 湿った路面から、うっすら、霧のよなものが、 ぼうっと浮かんで居るのが見える。 一雨ごとに秋が近付くのを、待つ心持ち。 どれくらい歩いて来たのかを知るには、一旦、 何処かで立ち止まってみるのも良い。 ふと立ち止まって、後ろを振り返ったなら、 いつの間にか、こんなに遠くまで来たのだなぁ、と 感じるだろか。それとも、未だこんな所…

独りごと

|縷々| |音| 夏の雲間から、コトリ落っこちた午後。 雷と夕立、連れてきた。 雨上がりの寂しさに、 それが何処からやって来るのか。 知り得る術など、勿論 メモ帖に書いてある訳で無し。 ただ独り、ぼんやり立つ夕暮れ。 夏祭りの、ここからは遠い喧騒。 [土曜日 雨上がりの一枚] Finest Hourアーティスト: Astrud Gilberto出版社/メーカー: Umvd Labels発売日: 2001/05/15メディア: CDこの商品を含むブログ (8件) を見る

月夜の浜辺

|縷々| |音| 月夜の晩に、ボタンが一つ 波打ち際に、落ちてゐた。 それを拾つて、役立てようと 僕は思つたわけでもないが なぜだかそれを捨てるに忍びず 僕はそれを、袂に入れた。 月夜の晩に、ボタンが一つ 波打ち際に、落ちてゐた。 それを拾つて、役立てようと 僕は思つたわけでもないが 月に向つてそれは抛れず 浪に向つてそれは抛れず 僕はそれを、袂に入れた。 月夜の晩に、拾つたボタンは 指先に沁み、心に沁みた。 月夜の晩に、拾つたボタンは どうしてそれが、捨てられようか? [火…

Ma non troppo...

|縷々| 間延びした土曜日に。 ちいさな歪みの土曜日に。 辞書に挟まった土曜日に。 何かの足りない土曜日に。 低く呟く土曜日に。 輪郭のたよりない土曜日に。 滲んだ半月の土曜日に。 夜雲のちぎれた土曜日に。 もう終わる土曜日に。 土曜日だった筈の、土曜日に。

私はリカオンが海を渡るのを見た

|縷々| |音| 海の匂い。 昨晩より続く雨の中に、漂う潮風の匂い。 こんな天気の日。海と山の距離の近い この辺りでは、時折、山の方にまで 海からの風が届くことが、珍しくない。 道すがら立ち止まり、野菜の入った籠を 別の手に持ち替えて、深く息を吸い込む。 少し湿った空気は、馴染みの在る匂い。 けれど私は、夏の盛りの海が 好きではない。季節の外れた海や、 薄曇りの天気の海の方が良い。 夏の終わりの海もまた、捨て難い。 [雨降りの金曜日の一枚] A Distant Shoreアー…

La passeggiata del vagabondo

|縷々| 例えば。 シチリアの音色に耳を傾けながら、 かの風に想い馳せ、グラニータの粒の 冷たいひと匙を口にするとき。 ブラジルの心優しき声に瞼を閉じ、 一杯の熱き珈琲を、ふと覗き込んで、 そっと、鼻先へ近付けるとき。 あなたがもし、そう望むのならば。 席を立ち、離れ、やがて去りゆくまでの間。 そこはいつでも旅先の何処かで、 あなたのささやかな夢想に成り得る。 この場所は、ここに在るけれど、 何処でも無い場所。或いは、 何処にでも行ける場所。

Mellow wave in the afternoon

|縷々| |音| グラノーラと冷たいミルク。 朝に飲む一杯の珈琲。 日曜日、午後への入り口は曖昧で、 この一日の全てを予測することは 恐らく、できない。 あなたにも。 私にも。 誰にも。 [Some pieces of Sunday]

Il cucitore

|縷々| |本| 例えば。そこに古い机が在って。 それと同じく、古い椅子も在って。 板と板との継ぎ目に、僅かな隙間を 幾つか見付けても、余り気にせず。 水拭きして。きれいにして。 その上に、楚々とした野の花を一輪。 文字も模様もついて居ない、 透明のただの瓶。半分水を汲んだら、 野の花をそっと、差してみたい。 須賀敦子全集〈第7巻〉どんぐりのたわごと・日記 (河出文庫)作者: 須賀敦子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/03/01メディア: 文庫購入: 3人 …

大人は分かってくれない

|縷々| |本| 人はいくつから子供で無くなって、 大人と呼ばれるよになるのだろか。 見目で判断されるのか。 年齢を境に分けられるのか。 精神の成熟度で測られるのか。 少年。少女。青年。 少し前まで、友人間ではよく 「三十からが大人。」と、半ば 冗談混じりで、云い云いしたけれど。 子供のなりした子供。 大人のなりした大人 子供のなりした大人。 大人のなりした子供。 そもそも私は、今何故そんなことを、 ふと、考えて居るのだろ。 こうちゃん作者: 須賀敦子,酒井駒子出版社/メーカ…

Before the bitter wind

|縷々| |音| 理想を追い過ぎれば、現実を見失い、 現実に固執し過ぎれば、理想を忘れる。 正しい指標さえ持ってさえ居れば、 全てが上手くゆく、と云う訳でも無い。 かと云って、何かに責任を見出せば 全てが解決する訳でも無い。そう。 世の中は、全くもって矛盾だらけで、 まるで、至極一部の人びとにしか 開かれて居ないよに思われても、 恐らく本当は、そうじゃない。 今は、いつ終わるとも知れない 長い長い行列の只中に居て、いつか 自分の順番の来るときを、気長に 待って居るのかも知れな…

ゆっくりゆくひとは遠くへゆくひと

|縷々| 私は地図を歩く。 名前のつけられた道 ちいさな袋小路の道を 瞼の奥に広げてみる。 やがて、ぼんやりとした中から 道の両脇に街が見えてきて 私は鞄に絵葉書を仕舞う。 人びとの生活の匂い。 ポッケに両の手突っ込んで 早足でもなく ゆっくりでもなく。 私は地図を歩く。

街灯にのびる影を踏む

|縷々| |音| 歩みをゆるめては、暫し夜空を仰ぎ見る。 放心と云うのでも、途方と云うのでも無い、 漠然と、しかしながら安堵にも似た 季節の抱擁に、今日一日の澱と煩いが、 徐々に濾過されてゆくよな、奇妙な感覚に捕われる。 何かに許しを請う程の身に覚えは、 果たして在ったろか?否、そんなものは 恐らくは無い筈だけれど、だとすれば 今しがた感じた、ちくりとした心持ちが どうした類のものならば、説明がつくだろか。 またひとつ終わった、日曜日の回想がもたらす 幾ばくかの寂しさか。それ…

雨だれ

|縷々| 台風の近付く、本日木曜日。 うかばれない溜息、或いは、ただの溜息。 珈琲と、そのために用意された 幾ばくかの時間が、人びとのもらす 其々の溜息のための、安堵となれば良い。 其処で写しとる日常の片鱗は、 ほんの少しの時を経て、やがては 忘れ去られてしまう、儚いものだけれど。 行間を読み解くのと同じよに、 雨のもたらす一握の静寂に、いつもとは違う 何かを感じ取ることができたなら、 あなたはきっと、幸運な人。

小さな部屋

|縷々| 人生は ― 夜明けの列車のなかの かなしい目覚め、たよりないひかりが 窓のそとに見えて、どこもかも痛む からだに、肌を刺す空気のまっさらで とげのあるメランコリーを感じること。 だが、不意の解放を思い出すのは、 なによりもいとおしい。 ぼくの そばには若い水兵がひとり。 制服の ブルマリンと白、そしてそとには いちめんの色がさわやかな海。 La vita ― e ricordarsi di un risveglio triste in un treno all'al…

Ragazzi di settembre

|縷々| |音| 青年。或いは、若者。 この言葉に私は何故か、石畳の道と、 寒い季節の出で立ちをした者の、 細長く歩く姿を思い浮かべる。 明るい聡明さを覗かせる横顔の その内側には、恐らく、 仄暗い憂鬱を隠し、少年と大人との間に 曖昧に横たわる、不均衡な境界を 若者らしい足取りで行き来しながら、 何かに想いを馳せて居る。 そんな情景を思い浮かべる。 [水曜日の一枚] ショパン:夜想曲全集アーティスト: アシュケナージ(ウラジミール),ショパン出版社/メーカー: ポリドール発売…

カラが咲く庭

|縷々| |本| 日々の喧騒に紛れ込んで 緩やかな坂道を登る。 活字を追いながら 其処に託された意志を探すのは 幾重にも重なり合った 現実の雑多から ほんの束の間でも 逃げおおせればなどと 考えるからなのだろか。 それとも他に 別の理由があるのだろか。 霧のむこうに住みたい作者: 須賀敦子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2003/03/01メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 9回この商品を含むブログ (19件) を見る

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