双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

訪問者

|縷々|


秋や冬、寒い季節の甘やかな感傷とも違う。
夏に感じるそれは、重たい湿り気を含んだ、
鬱々とした虚無に似て、寝苦しい寝台の中で
鈍重に纏わりつき、なかなか解放してはくれぬ。
そんなとき、私の志は、ひどく脆いよに想われる。
確かに、己の歩みを見付けた筈だのに、ひと度
夏のそれに捕われてしまうと、次第にぐらり揺らいで、
仄暗い水底へ、ずるり引っ張られてしまう。
水底から水面を見上げ、身動きも取れぬまま、
ただ、ゆらゆらと寝台に沈んで居るよな心地で、
朝の訪れすら、疑いながら。悶々と暗々と。
夜な夜な人の心の奥底の、不安や脆さを探り出す、
お前は一体、何者なのか。
だから夏は嫌いだ。

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