双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

La passeggiata del vagabondo

|縷々|


例えば。
シチリアの音色に耳を傾けながら、
かの風に想い馳せ、グラニータの粒の
冷たいひと匙を口にするとき。
ブラジルの心優しき声に瞼を閉じ、
一杯の熱き珈琲を、ふと覗き込んで、
そっと、鼻先へ近付けるとき。
あなたがもし、そう望むのならば。
席を立ち、離れ、やがて去りゆくまでの間。
そこはいつでも旅先の何処かで、
あなたのささやかな夢想に成り得る。
この場所は、ここに在るけれど、
何処でも無い場所。或いは、
何処にでも行ける場所。

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