双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

月夜の浜辺

|縷々| |音|


月夜の晩に、ボタンが一つ
波打ち際に、落ちてゐた。



それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂に入れた。



月夜の晩に、ボタンが一つ
波打ち際に、落ちてゐた。


それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
   月に向つてそれは抛れず
   浪に向つてそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。



月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁み、心に沁みた。



月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?


[火曜日の一枚]

Entre Nos

Entre Nos

数日前の新聞にて、鎌倉の海岸にちなみ
この詩がとりあげられて居た。
ふと、今日になって思い出す。
静かで。寂しくて。小さくて。
この詩、いっとう好きだな。

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