双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

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溺れて眠れ

|縷々| |音| 暗がりの中で目を覚ますも、未だ朝は明けたばかり。 再び枕に顔を埋め、まどろみと現の境に、暫く 行きつ戻りつしながら、いつの間にか眠りに沈む。 日曜日が一体、何だと云うのか…。 次に目覚めたとき、私はそう呟いた気がする。 夢に何を見たのか、殆ど覚えては居らぬけれど、 寝床を這い出してから一日を終えるまで、 寝言とも何ともつかぬ、今朝方の呟きのことなど、 すっかり忘れてしまって居たのを、今しがた、 遠く思い出した。ただ、それだけのこと。 [日曜日の一枚] Giv…

名も無き砂塵の一粒を

|縷々| |音| 晴れ間から零れ落ちる細い雨は、途切れ途切れに。 間隔を置く内に、気が付けば通り過ぎて居り。 夜になると車の往来は減って、街灯の橙の照らす 湿った路面から、うっすら、霧のよなものが、 ぼうっと浮かんで居るのが見える。 一雨ごとに秋が近付くのを、待つ心持ち。 どれくらい歩いて来たのかを知るには、一旦、 何処かで立ち止まってみるのも良い。 ふと立ち止まって、後ろを振り返ったなら、 いつの間にか、こんなに遠くまで来たのだなぁ、と 感じるだろか。それとも、未だこんな所…

独りごと

|縷々| |音| 夏の雲間から、コトリ落っこちた午後。 雷と夕立、連れてきた。 雨上がりの寂しさに、 それが何処からやって来るのか。 知り得る術など、勿論 メモ帖に書いてある訳で無し。 ただ独り、ぼんやり立つ夕暮れ。 夏祭りの、ここからは遠い喧騒。 [土曜日 雨上がりの一枚] Finest Hourアーティスト: Astrud Gilberto出版社/メーカー: Umvd Labels発売日: 2001/05/15メディア: CDこの商品を含むブログ (8件) を見る

月夜の浜辺

|縷々| |音| 月夜の晩に、ボタンが一つ 波打ち際に、落ちてゐた。 それを拾つて、役立てようと 僕は思つたわけでもないが なぜだかそれを捨てるに忍びず 僕はそれを、袂に入れた。 月夜の晩に、ボタンが一つ 波打ち際に、落ちてゐた。 それを拾つて、役立てようと 僕は思つたわけでもないが 月に向つてそれは抛れず 浪に向つてそれは抛れず 僕はそれを、袂に入れた。 月夜の晩に、拾つたボタンは 指先に沁み、心に沁みた。 月夜の晩に、拾つたボタンは どうしてそれが、捨てられようか? [火…

Ma non troppo...

|縷々| 間延びした土曜日に。 ちいさな歪みの土曜日に。 辞書に挟まった土曜日に。 何かの足りない土曜日に。 低く呟く土曜日に。 輪郭のたよりない土曜日に。 滲んだ半月の土曜日に。 夜雲のちぎれた土曜日に。 もう終わる土曜日に。 土曜日だった筈の、土曜日に。

私はリカオンが海を渡るのを見た

|縷々| |音| 海の匂い。 昨晩より続く雨の中に、漂う潮風の匂い。 こんな天気の日。海と山の距離の近い この辺りでは、時折、山の方にまで 海からの風が届くことが、珍しくない。 道すがら立ち止まり、野菜の入った籠を 別の手に持ち替えて、深く息を吸い込む。 少し湿った空気は、馴染みの在る匂い。 けれど私は、夏の盛りの海が 好きではない。季節の外れた海や、 薄曇りの天気の海の方が良い。 夏の終わりの海もまた、捨て難い。 [雨降りの金曜日の一枚] A Distant Shoreアー…

La passeggiata del vagabondo

|縷々| 例えば。 シチリアの音色に耳を傾けながら、 かの風に想い馳せ、グラニータの粒の 冷たいひと匙を口にするとき。 ブラジルの心優しき声に瞼を閉じ、 一杯の熱き珈琲を、ふと覗き込んで、 そっと、鼻先へ近付けるとき。 あなたがもし、そう望むのならば。 席を立ち、離れ、やがて去りゆくまでの間。 そこはいつでも旅先の何処かで、 あなたのささやかな夢想に成り得る。 この場所は、ここに在るけれど、 何処でも無い場所。或いは、 何処にでも行ける場所。

Mellow wave in the afternoon

|縷々| |音| グラノーラと冷たいミルク。 朝に飲む一杯の珈琲。 日曜日、午後への入り口は曖昧で、 この一日の全てを予測することは 恐らく、できない。 あなたにも。 私にも。 誰にも。 [Some pieces of Sunday]

Il cucitore

|縷々| |本| 例えば。そこに古い机が在って。 それと同じく、古い椅子も在って。 板と板との継ぎ目に、僅かな隙間を 幾つか見付けても、余り気にせず。 水拭きして。きれいにして。 その上に、楚々とした野の花を一輪。 文字も模様もついて居ない、 透明のただの瓶。半分水を汲んだら、 野の花をそっと、差してみたい。 須賀敦子全集〈第7巻〉どんぐりのたわごと・日記 (河出文庫)作者: 須賀敦子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/03/01メディア: 文庫購入: 3人 …

大人は分かってくれない

|縷々| |本| 人はいくつから子供で無くなって、 大人と呼ばれるよになるのだろか。 見目で判断されるのか。 年齢を境に分けられるのか。 精神の成熟度で測られるのか。 少年。少女。青年。 少し前まで、友人間ではよく 「三十からが大人。」と、半ば 冗談混じりで、云い云いしたけれど。 子供のなりした子供。 大人のなりした大人 子供のなりした大人。 大人のなりした子供。 そもそも私は、今何故そんなことを、 ふと、考えて居るのだろ。 こうちゃん作者: 須賀敦子,酒井駒子出版社/メーカ…

Before the bitter wind

|縷々| |音| 理想を追い過ぎれば、現実を見失い、 現実に固執し過ぎれば、理想を忘れる。 正しい指標さえ持ってさえ居れば、 全てが上手くゆく、と云う訳でも無い。 かと云って、何かに責任を見出せば 全てが解決する訳でも無い。そう。 世の中は、全くもって矛盾だらけで、 まるで、至極一部の人びとにしか 開かれて居ないよに思われても、 恐らく本当は、そうじゃない。 今は、いつ終わるとも知れない 長い長い行列の只中に居て、いつか 自分の順番の来るときを、気長に 待って居るのかも知れな…

ゆっくりゆくひとは遠くへゆくひと

|縷々| 私は地図を歩く。 名前のつけられた道 ちいさな袋小路の道を 瞼の奥に広げてみる。 やがて、ぼんやりとした中から 道の両脇に街が見えてきて 私は鞄に絵葉書を仕舞う。 人びとの生活の匂い。 ポッケに両の手突っ込んで 早足でもなく ゆっくりでもなく。 私は地図を歩く。

街灯にのびる影を踏む

|縷々| |音| 歩みをゆるめては、暫し夜空を仰ぎ見る。 放心と云うのでも、途方と云うのでも無い、 漠然と、しかしながら安堵にも似た 季節の抱擁に、今日一日の澱と煩いが、 徐々に濾過されてゆくよな、奇妙な感覚に捕われる。 何かに許しを請う程の身に覚えは、 果たして在ったろか?否、そんなものは 恐らくは無い筈だけれど、だとすれば 今しがた感じた、ちくりとした心持ちが どうした類のものならば、説明がつくだろか。 またひとつ終わった、日曜日の回想がもたらす 幾ばくかの寂しさか。それ…

雨だれ

|縷々| 台風の近付く、本日木曜日。 うかばれない溜息、或いは、ただの溜息。 珈琲と、そのために用意された 幾ばくかの時間が、人びとのもらす 其々の溜息のための、安堵となれば良い。 其処で写しとる日常の片鱗は、 ほんの少しの時を経て、やがては 忘れ去られてしまう、儚いものだけれど。 行間を読み解くのと同じよに、 雨のもたらす一握の静寂に、いつもとは違う 何かを感じ取ることができたなら、 あなたはきっと、幸運な人。

小さな部屋

|縷々| 人生は ― 夜明けの列車のなかの かなしい目覚め、たよりないひかりが 窓のそとに見えて、どこもかも痛む からだに、肌を刺す空気のまっさらで とげのあるメランコリーを感じること。 だが、不意の解放を思い出すのは、 なによりもいとおしい。 ぼくの そばには若い水兵がひとり。 制服の ブルマリンと白、そしてそとには いちめんの色がさわやかな海。 La vita ― e ricordarsi di un risveglio triste in un treno all'al…

Ragazzi di settembre

|縷々| |音| 青年。或いは、若者。 この言葉に私は何故か、石畳の道と、 寒い季節の出で立ちをした者の、 細長く歩く姿を思い浮かべる。 明るい聡明さを覗かせる横顔の その内側には、恐らく、 仄暗い憂鬱を隠し、少年と大人との間に 曖昧に横たわる、不均衡な境界を 若者らしい足取りで行き来しながら、 何かに想いを馳せて居る。 そんな情景を思い浮かべる。 [水曜日の一枚] ショパン:夜想曲全集アーティスト: アシュケナージ(ウラジミール),ショパン出版社/メーカー: ポリドール発売…

カラが咲く庭

|縷々| |本| 日々の喧騒に紛れ込んで 緩やかな坂道を登る。 活字を追いながら 其処に託された意志を探すのは 幾重にも重なり合った 現実の雑多から ほんの束の間でも 逃げおおせればなどと 考えるからなのだろか。 それとも他に 別の理由があるのだろか。 霧のむこうに住みたい作者: 須賀敦子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2003/03/01メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 9回この商品を含むブログ (19件) を見る

注意深く綴られる横顔

|縷々| 灰色の曇り空広がる日曜日。 この季節、日曜日の空は曇りが望ましい。 少しだけ重ったるい、灰色が良い。 季節は言葉無く語る。 或る景色を。或る気分を。 季節はまた、恵まれた午後にできる 心地良い歪みによって、時折、 記憶を手繰り寄せる手助けをする。 例えばそれは、流れの緩やかな河を、 人や車を乗せた、小さなフェリー船が横断する 風景。対岸の街は、恐ろしく静寂に満ち、 こちら側の喧騒とは、全く切り離されて居て、 私はふと、あそこには何があるのかしら、 と思う。やがて船は…

スプン一匙分の甘い孤独

|縷々| |音| 時折訪れる、ひやりとした五月の表層が、 そっと傍らに寄り添う、午後の或る瞬間。 雨降りの土曜日の持つ、緑色した憂鬱は 決して、深刻な類のものなんかじゃない。 ただの独り善がり。ただの気分。 朴杖ついて、もの想いに耽ったとしても、 それは重力とは無縁の、ただの感覚。 雨降りの土曜日が、晴れるよりも ずっと良いのは、きっとそんな理由。 それが証拠に、ほら。 雨降りの土曜日が、夜の中に残したのは、 軽やかで美しい、孤独の尻尾さ。 [雨降りの土曜日の一枚] Acou…

誰かが階段を飛ぶようにおりてくる

|縷々| |音| 休日特有の、気だるい空気。 時計の針は、なかなか進まない。 ふと、子供の頃には 春休みだの、夏休みだのに こんな風な気だるさを、 覚えたものだろか、と思い馳せる。 違う。あの頃には、感じなかったのだ。 こんな気持ちは・・・。 朝から、ひどくいたたまれぬ気分。 何の事は無い。ただの自己嫌悪。 分かり切って居る事への、 自分なりの苛立ち、などと云うものは 当然、他人へ向けてはならぬもの。 よくよく、冷静になってみれば、 己の愚かさばかりが残される。 反省と叱咤の…

なんにもない

|縷々| |音| どうした事だろう。 何が? いや、つまらない事さ。 他愛無い問答を、ひとり 頭の隅っこで繰り返す、 取り残された、金曜日。 誰か、云ったじゃないか。 もうじき空が晴れて、 素敵な匂いを運んでくるって。 永い永い、休暇の中身なんて、 どうでも良いのさ。 そう、どうでも良い。 私たち全ての諦めを、やっつけるに 充分なだけの材料は、果たして 其処に在るのかい? [本日の店内音楽] 特別な考えも無しに、茶色いのばかりを 選んでみたら、これはこれで 何とも良い按配・・…

暗闇のなかで独楽のようにくるくるとまわっていた

|縷々| 天変地異の起こるのは、兎も角として 日々の起伏は、続いて終わらぬ、 緩やかな丘のよでもあり。 石ころを蹴飛ばして、あらぬ方角へと 転がってゆくを眺めては、 静かな忘却と、つつましき再生を 幾度となく、繰り返しつつ。 はて。何処から歩いて来たものか、と たまには、思い出したりもする。 お願いだから、今は少しの煩いも、 よこさないでおくれ。 でないと私は、ストーブの中の 小さき炎ですら、混沌の中に 気付け無くなってしまう。 ただ、ひっそりと、冬の枯野の丘の上、 遠くに見…

兄さんは世の中に起こることが何もかもいやなんでしょ。

|縷々| 日々の中で、思うことは多い。 他愛無き事、切実な事。 しなやかに琴線を保ちつつ 様々を、見聞きし、感じるのは なかなかに、難儀なものだ。 人の心を掌握する事の、 容易では無いと知るには やはり、難儀を伴うもの。だから 娘さんよ。誰からも良く思われよう などと、努々、望むなかれ。 闇雲に努力せずとも、ただ 間に、距離を置いてごらん。 涙は、容易く流してはいけない。

ひずみにまどろむ

|縷々| |音| 雨。静けさ。 一月最後の、一日。 灰色の中に、音の輪郭をたどり 腰掛けた椅子に、沈み込むと いつもより、時間の経つのが 遅れ気味になり、感覚を鈍らせる。 雨の日がもたらす調和は、 永すぎてもいけない。 一冊の本を、読み終えるまでの 暫しの間だけに、許される幻影。 Vetiverアーティスト: Vetiver出版社/メーカー: Dicristina Stair発売日: 2004/05/18メディア: CD クリック: 1回この商品を含むブログ (7件) を見る…

Six Pence, Pocket Full of Rye

|縷々| |音| 一日の輪郭は、定かでは無い。 灰皿に散らかった、マッチの燃えかすに、 蛇口の先にぶら下がり、いつ落ちるとも 知れない滴の一粒に、そして そっと扉を閉めた後の、ひっそりと 寂しげな余韻に、似て居る事もある。 誰かのこぼした溜息が、緩やかな 波紋を作って広がり、するとまた 誰かが、無意識に呼応する。 冬の表層を、知ろうとする者にとって、 何が指標となるだろか…。 [本日の私的珈琲と音楽] モンターニャ・ベロニカ Desormaisアーティスト: Julie Do…

昨日 今日 明日

|縷々| |音| 日々感じる事の、風化させる無かれ。 想いを引き摺るのでは無い。 忘却と保存の、その狭間に 絶妙の均衡を保ってゆく。 鈍足のよで居ながら、ふと 振り返ると、恐ろしく足早に 駆け抜けていたのか、一年。 それとも、はて。その逆か・・・。 何れにしろ、年は暮れゆく。 気が付けば、珈琲ばかり飲んでいた 何想うでも無い、ありふれた夕刻。 [本日の私的珈琲と音楽] ブラジルNo.2 There's Never Been a Crowdアーティスト: Richard Dav…

空がおちてくる

|縷々| |音| 時間を持て余すよな日は、 いつも同じ事ばかりが、遣る瀬無く 心の枯野を、駆け巡る。 時たま訪れるのは、分かち合えぬ人々と 私の提供するものとの間、哀しいかな 永久に横たわる、平行線の温度差。 私とて、馬鹿では無い。 はなから、分かって居たことと 心底知りつつ、けれど何故だろう。 それでも私は、どうにかして 形を成したい、と願って居る。 おかしなものだ。毎日では無いにしろ、 時に、打ちひしがれて 妥協やら、僅かの諦めなど、甘んじて 受け入れて居ると云うのに。 …

行き先は知らない

|縷々| |音| 駆け抜ける季節の後は、追うまい。 ぽっかり空いた、つかの間の空白には 程無く、見慣れた顔した 別の季節がやって来る。 やぁ。一年間、何処かを ほっつき歩いていたのだね。 お互い、知らぬ仲じゃなし。 行儀の良い挨拶など、交わさずとも 気が付けば、また すっかりいつものよに。 [本日の店内音楽]

水底へ櫂は沈む

|縷々| |音| 季節の感触を、己が手で確かめながら 徒然、日々を送る。 日によって微妙に変化する その感触は、私の心が鈍らぬよに 私を、試して居るかのかも知れない。 などと、思いを巡らせながら 朝起きて、ペエジをめくり 夜、消灯と共に、そのペエジを閉じる。 毎日は、こうした手探りを繰り返し、 後ろへ後ろへ、過ぎ去ってゆく。 自分の中の中心軸が、ふと気が付くと ぶれて、揺らいで居ることがある。 揺らいで、ぶれながら、やがては大きな 音叉となって、最後には小さな 螺子が一つ、ぽ…

糸杉のある一本道はどこへ続くのだろう

|縷々| |音| Live at Sin-Eアーティスト: Jeff Buckley出版社/メーカー: Sony発売日: 1993/11/23メディア: CDこの商品を含むブログ (6件) を見る 脈絡の無い言葉が、次々と浮かんでは消えてゆくのは、 何処かしら、手応えの無い白昼夢に似ている・・・。 リンドウの薄むらさき。木陰。木漏れ日。 風に枯草の鳴る音。セイヨウオダマキ。 乾いたタオルの匂い。ぺんてるのサインペン。 縞模様のシャツ。雨上がりの石畳。 アイスクリーム売り。そし…

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