双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

注意深く綴られる横顔

|縷々|


灰色の曇り空広がる日曜日。
この季節、日曜日の空は曇りが望ましい。
少しだけ重ったるい、灰色が良い。
季節は言葉無く語る。
或る景色を。或る気分を。
季節はまた、恵まれた午後にできる
心地良い歪みによって、時折、
記憶を手繰り寄せる手助けをする。
例えばそれは、流れの緩やかな河を、
人や車を乗せた、小さなフェリー船が横断する
風景。対岸の街は、恐ろしく静寂に満ち、
こちら側の喧騒とは、全く切り離されて居て、
私はふと、あそこには何があるのかしら、
と思う。やがて船はこちら側へと、再び
折り返して来る。さっきとはまた別の、
人や車を乗せて。そのずっと向こうには、
煙を吐き出す、大きな大きな蒸気船。



暫しの追憶の後、我に帰った私が見たのは
もしかすると、九月の横顔だったかも知れない。

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