|日々| の検索結果:
|日々| 九月も半ば。暦は秋を迎えながらも、 日中は未だ日差しが強くて、 季節と季節とが交錯して居る。 それがいざ、夜になると云うと 途端に秋の顔となり、夜更けの薄い夜具の中、 肌寒さに身じろぐこととなるのだけれど、 羽根布団は押入れの布団袋に納まったまま。 横着は一先ず、暗がりの中を夢遊病者のよに歩き、 玄関の棚から寝袋を引っ掴んで持って来ると、 其処へ潜り込んで上から夏掛けを重ね、 ふうと安堵した後、深い眠りに就いた。 急場凌ぎは否めぬものの、是が案外快適なもので、 何や…
|日々| 日中は、晴れなのだか曇りなのだか はっきりしない空模様が続いて、 夕刻近くとなると、決まって雨が降り出す。 こんな調子の日々が、暫く続いて居る。 おびただしい羽蟻の群れにうんざりとし、 蜘蛛の巣の微かに揺れるのを、只 何とは無しに、ぼんやりと眺めて居ると、 何処かから、灯りに吸い寄せられるよにして、 一匹のアメリカシロヒトリが視界に紛れ込んだ。 よらよらと不気味に青白く、心底ぞっとする。 まるで死んで居るみたいな生き物、と想う。 汗の冷えた首筋は湿って鈍く、 夜具を…
|日々| 昨日に小豆島の素麺、本日は朝採りの平豆の到来物。 今時分の食事は何かと思案の為所であるので 丁度宜しく、素麺に平豆の天麩羅で昼餉とした。 素麺のつゆと云うと、我が家では胡麻だれなのだが、 是は亡くなった父方の祖母の慣わしである。 父は元より、私も祖母の拵えるこのたれが好きで、 やれ素麺と云うと、すり鉢とすりこ木とを渡され、 しみじみ胡麻をすらされたものであった。 鰹の出汁に味噌と砂糖、すった煎り胡麻を加えて よく合わせ、頃合まで冷蔵庫に冷やしておく。 夏場は素麺が食…
|日々| 地球の裏側、伯剌西爾にて 蹴球W杯が極めて地味に開幕し、 極めて地味に開催中である。 今一つパッとせぬ伊太利亜の初戦は、 こちらも今一つパッとせぬ英蘭と。*1 ここの組は所謂”死の組”なのだけれども、 ちゃっかりして居る分、運と云う点については 英蘭よか、伊太利亜に分が在る気もする。 久々に訪れた梅雨の晴れ間は、 珍しく一日からりと晴れ、厄介な湿気も無い。 午前中に、夜具など大物の洗濯と掃除。 窓と云う窓を全て開け放って、隅々まで風を通す。 軽い昼食の後で、文藝別冊…
|日々| 痛めた首は、未だ僅かな違和感こそ残るものの、 概ね快癒し、朝の目覚めに付き纏うことも無い。 空気はからりと澄んで、些か肌寒い程。 暗い色を帯びた雲が所々、晴れ間に紛れ込み、 午後の室内に薄い影が降りる。 こんな日は、何を拵えて食べたら良いのか 思案すれど浮かばず、結局は糠漬けに味噌汁。 常備菜などで簡単に済ませてしまうと、 食べながらも、食べ終えても、少し寂しい。 ここ数日、ぐずついた天気の所為でベランダへ出られず、 不貞腐れて居た猫たちを、久々に出してやる。 丁度…
|日々| ”やらなきゃいけないこと”が概ね片付き、*1 胸の燻りがすっきり晴れたと思いきや、 それと入れ違いで、どうやら寝違えたらしい。 首後ろから右肩甲骨にかけての広範囲を 盛大に痛めてしまい、再び遣る瀬無さ戻る。 通りすがりの冷やかし客らに疲れ果て、 店を仕舞って帰宅。風呂に浸かった後、 微炭酸の飲料水を飲み、消炎湿布を貼る。 猫らが甘えて近づいて来たのだが、 湿布の匂いにぎょっとなって去って行った。 哀しい。 明日、鍼灸院へかからねば。 *1:唯一残った猫らの休み場のた…
|日々| 朝目覚めると、外が薄暗い。雨の音。 七時の給餌後、再び寝床へ戻った猫たちは、 横腹をゆっくり上下させながら深い眠りの中に居て、 耳を澄ますと、互い違いに寝息が聞こえてくる。 彼らの眠りを断つのが躊躇われ、 一旦手にした掃除機を、そっと元へ戻した。 空になった二つの皿を洗い、 ソファの上へ重なった洗濯物を畳む。 窓硝子に雨粒が流れ落ちる傍らで、 珈琲とトーストの遅い朝食のよな昼食。 J・テイラーの歌を聴きながら、 『BRUTUS』の東京案内を読んだり、 高峰秀子のエッ…
|日々| ゆっくりの起床。 掃除して、夜具を取替え、洗濯機を回す。 その間にピザトーストを拵えて、 朝と昼とを兼ねた軽い食事。 食事が済んだら、洗濯物を出して干し、 厠の砂替え、歯磨き、毛を梳くなど。 一通り猫らの世話を終えた後、 窓を拭いて、鉢植えに水遣り。 お茶を淹れて、小一時間程読書。 録画しておいた蹴球を、ささっと観戦。 あっと云う間に夕刻となって居た。 身の回りの些事だけで、休日が終わる。 猫ら、鳥を見るの図。
|日々| 猛々しい暑さと書いて”猛暑”と読む訳だが、 暑さなんてものが猛々しくあったところで、 迷惑千万、格好良くも何とも無い。 つい先日までは日中も比較的過ごし易く、 夜ともなれば、長袖の寝巻きと綿毛布の 仕舞えぬ涼しさが続いて居たここいらも、 いよいよ以って、猛暑を受け入れる気なのらしい。 蝉が鳴き、蛙が鳴き、草いきれにむせる。 知らぬ間に、藪蚊に食われた右肘の辺りを 恨めしく想いながら、ぬるい麦茶を飲み干す。
|日々| 昼過ぎからとの予報を裏切り、既に朝から雨。 古森号の出動を諦め、ズボンの裾を濡らしながら 徒歩にて出掛け、鍼灸院と散髪を梯子する。 施術時間が長引いてしまい、散髪に遅れて恐縮。 襟足どうしましょう。刈り上げなくて良いです。 不精に伸びた分、耳を出し、前髪を揃えるも、 帰る道中に、やはりこの場合の襟足は、 潔く刈り上げるべきであったなぁ、と想う。 駅まで出ると、丁度のバスが在ったので、 是に乗って帰宅し早々、チビ猫忍びに餌を与え、 その後で自らも昼餉。施術の影響で臀部…
|日々| ついこないだ本領などと書いたばかりだのに、 雨の印象も薄いまま、気付けば梅雨が明けて居た。 かつての陰翳の情緒を欠いて久しい今の世、 梅雨なんてのは満喫する気にならぬけれど、 それにしたって、あまりに唐突であったことだよ。 すると、何やら妙にイカの塩辛が食べたくなって、 スルメイカを買い求め、是を塩辛に拵えた。 潰したワタへ生醤油と味醂。七味を少々。 季節柄、柚子の使えぬのが悔しいところだが、 昼餉の小皿へ盛り、キムチ漬けと共に食せば、 案の定ご飯がすすんで、茶碗に…
|日々| いよいよ以って、蒸し蒸しも本領と云った感。 若猫は長く伸び、子猫も又然り。 糠漬けをぽりぽりやっては、脱力し、 じわとした汗の出方に、四十路を理解する。 梅仕事が在るから辛うじて妥協するが、 暦の中では最も相性の良からぬ時節である。 この不快な夜を如何に過ごそうか、 只々、気抜けの上に放心を重ね、 と、窓を開けたところへ風が入って来た。 ばさばさと煩い、風情の欠片も無い風。 そう云えば、未だ蛙の声を聞いて居ない。
|日々| 午前中に散髪を予約してあったので、 久々に古森号を駆り出そうと想うも、 どうやら空模様が怪しい。 先週、念入りに整備したので、 調子見も兼ねたかったのだけれど、 仕方が無いのでバスに乗ってゆく。 案の定、美容室に着く頃にちらと降り出した。 初夏と云うので前髪も短く、さっぱり。 清々して、小雨の中を早足で大型店まで さかさかと歩き、がらんとした生地売り場を物色。 カーテン用のとモンペ用の生地を買い求める。 帰りがけ、パン屋へ食パンを取りに立ち寄ると、 軒下に小さな黒猫…
|日々| 山は爽やかな新緑の様相であるが、 未だに湯たんぽの必要な夜が続くと云う、矛盾。 まことに納得のゆかぬ五月である。 天気予報の最高気温も殆ど当てにはならず、 しかしながら、うっかり是に期待し、 薄手のシャツなど着て、ぶると身震いすれば 何やら、自分が馬鹿か阿呆の様な気がしてくる。 旬となれば食べたくなる筈の、鰹のたたきですら、 食べたいと想えぬのが、実に哀しい。
|日々| 去った筈の冬が出戻って、哀れな春は所在無い。 しかし春と云ったって、目前に四月を控えながらも、 ここの桜は未だ蕾のまま、枝も寒々しく、 先週にようやっと木蓮が咲いたくらいであるから、 こちらは然程、面食らいもしないのだけれど、 当の春めとすればさぞや口惜しく、心苦かろうて。 箪笥よりセーターを取り出し、スボン下、 厚手の靴下などで、冬めいた身支度をする。 猫の毛皮は、再びむくむくとして居る。 冷えた蛇口に触れると、指先が反射的に離れた。
|日々| 春霞に便乗したものか。 やれ花粉やら砂塵やら埃やら、 煩わしいのばかりが揃いも揃ったり。 山の姿などはすっかりこれらに埋もれ、 稜線すら殆ど確認できぬ有様であり、 其処へ暴力的春の嵐が吹き荒れれば、 さながらカオスの如き様相と相成り。 是だけ派手に好き勝手されれば、 マスクと眼鏡とで防備を整え、 薬を含み、目薬などさしたところで、 どだい効果の程度は知れて居る。 顔は何処も彼処も鬱陶しいばかり。 出来ることなら、目一杯の奇声をあげ、 是を一気にぐしゃっとやりたい衝動…
|日々| 只ばたばたと仕事に忙殺されるまま、 気付けば、時刻は午後四時も半ば過ぎ。 やっつけの昼餉を拵えて、是を食すも、 もはや疾うに昼とは呼べぬ也。 疲弊の澱みに遅々として箸の進まぬ中、 ジェームズ・コバーンやイーストウッド翁。 ユーコンの犬橇レース。更には 拙宅の若猫の艶々した毛並みなど。 脈絡無き、しかしながら心惹かれる事柄を 次々と想い浮かべるうち、満ち足りて、 ようやっと充電の完了した次第。
|日々| 昼を過ぎた頃から空が急に翳り出すと、 地響きを起こす程の雷が轟くと同時に、 棚の上の食器たちが震えて音をたて、 雨に混じった雹が窓硝子を叩く。 それを境に空気は変わり、 頬を刺すよな冷たい風が、北からやって来た。 季節はずれの空模様と、宙ぶらりんの困惑。 夜の部屋のつんとする冷気に、 そろそろ湯たんぽを出しても良い頃合かしら。 などと想う。
|日々| 先週辺りから、朝晩がぐっと冷え込み出して、 部屋の支度に少しずつ冬物が増えて、 夜具に毛布を一枚足して、 シーツをフランネルのと換えて、 毛糸のカーディガンを着た。 猫は先代を真似て押入れに入って、 やっぱり先代と同じ場所で丸く眠って、 夜の空気はつうと冷たくなって、 そうして部屋はひっそり、静かとなった。 ちょっと寂しくて、けれども安らかで。 『ムーミン谷の十一月』みたいだな。
|日々| 逸れた台風の尻尾の名残りか、 朝からむわんと汗ばむよな陽気。 けれども午後に入って、 西の方から大きな雨雲が近付くと、 空が段々に暗くなる。程無く、大粒の雨。 幾度かの降ったり止んだりが続いて、 宵の頃には、いつの間にか終わって居た。 表へ出て、蛙の居場所を確かめる。 相変わらず四角い図体で、植木鉢の縁。 雨上がりのひんやりとした夜風の中に、 微かな、一握の、金木犀の匂いがした。 何処かで犬が、くんと鳴く。
|日々| 日中の秋夏ないまぜの奇妙さ、相も変わらず。 見上げた空には入道雲と鱗雲が隣り合い、 秋の大運動会に集う人々は、真夏の装いである。 昼餉など、いったい何を拵えたら良いものかと、 冷蔵庫の棚をじいと見詰めては、溜息も出る。 是には猫で無くとも、いい加減にうんざりとし、 彼らの作法に倣って不貞寝、としたいところが、 しかしながら、当方の所属は人間であり、 曲がりなりにも、一応の仕事らしきも持って居て、 それで金銭を稼がねば暮らしてゆかれないため、 幾らうんざりだ、辟易だと…
|日々| 何やかや、ふた月も放ってしまった散髪へ行く。 事前に予約の電話をかけたところ、 月曜日は生憎朝の八時しか空いて居ない との事であったのだが、 たまには早い内に動くのも宜しかろうと、 日々徐々に馴染みつつある古森号に乗っかって、 団地の中を抜け、街場へと下り、其処から浜へ向かう。 夏休みだから、道中に通学の子供らの姿も無く、 すいすいと走るまま、二十分程して美容室に到着する。 少々行儀は悪いけれど、あんまり喉が渇いたもので、 途中に買い求めた珈琲牛乳を飲みながら、 不…
|日々| 暦は六月も半ばを過ぎ、梅雨を迎え、 いつに無く肌寒い日が続いて居る。 夜などは肌寒いどころか、全く立派に寒いもので、 律儀に衣類から夜具から季節様のものと 入れ替えてしまった手前、今更寒いからと云って、 押入れから引っ張り出すのも口惜しく、 半ば痩せ我慢だけで凌いで居たのだが、 ここ数日は、それもいよいよ馬鹿らしくなってきて、 已む無く薄手の膝掛けを一枚だけ、引っ張り出した。 しかし、腰から下はそれで何とかなっても、 半分は如何ともし難い。 かと云って、一冬過ごして…
|日々| 火事と親爺こそ無かったが、地震と雷には事欠かぬ一日。 老婆心丸出しで、ぶつくさ云い、しぶしぶ諦めて過ごす。 デジタル写真機の設定を見直したり、調節したり。 財布の中身をひっくり返して掃除したり、繕ったり。 紙を切ったり、貼ったり。線を描いたり、消したり。 何れも必要であったと云えば、確かに必要であったに 違いは無いのだが、些かも有意義とは程遠く、鼻から溜息。 最後に熱いほうじ茶淹れて、今日を終いとした。
|日々| |若旦那| やけに長かった気のする一週間を終え、爽やかに目覚めた月曜の朝。窓を開ければ、吹く風の幾分涼やかな晴天なり。口端のヘルペスをうっかり忘れて、またしても歯ブラシの柄をあててしまい、ううと呻く。嗚呼、厄介だ。面倒だ。 洗濯物を干しに表へ出ると、山はいよいよ新緑の季節と云った感。休みではあったが、別段出掛ける予定も無いので、一通りの家事を済ませた後に、私事の整理や読書。若旦那の遊び相手などして過ごす。 猫タワー最上段のくぐり穴から、主を挑発。それでお前は満足か?…
|日々| 気持ち良く寝床を出れば、何と云う家事日和だろ。 早速に窓を開け放って、からりと晴れた空気を通す。 雑巾絞って床拭き、窓拭き。シーツを放り込んだ 洗濯機を回す間に、トイレや風呂場など。水周りの 掃除を隅々まで済ますと、清々と風通し宜しく、実に さっぱりとする。いよいよこのトイレブラシも寿命か。 そう云えば、風呂の入浴剤も残り僅かだったかな。 買足しの必要となった品を、ささとメモに書き留め、 在り合わせで拵えたサンドウィッチと珈琲で昼食を 済ませた後、先日書いた矢先で些…
|日々| 春の奴め。 今頃になって、ようやく重い腰を上げたと見え、 桜に木蓮に辛夷、其処へ終いの頃の梅まで、 全て一緒くたにして咲かせて、 無理矢理の帳尻を合わせる魂胆らしい。 まったく、ものぐさなことだよ。 など独り胸の内へぼやきながら、 小皿の上の胡瓜と蕪とを、交互にぽりとやり、 どうやら糠床の仕上りの首尾よく運んだのを 確かめて、しめしめ、と想う。
|日々| 爺様が逝って丁度ひと月。初めての月命日を迎えた。 若旦那がやって来たのは、丁度二週間前の今日だった。 当たり前のよに、そっと静かに重なり合う、二つの魂。 寒風の中にも、からりと晴れた冬空は何処までも澄んで、 桶の水に手指を悴ませながら、午後。窓硝子を磨いた後、 黄緑色したポンポンの小菊を買い求めて、爺様に供えれば、 寂しいのと、あったかなのとが、入り混じったよな心持ち。
|日々| 喉に覚えた違和感が、軽い風邪を長引かせたか。 暫くの間、煩わしい空咳が続いて居たのだけれど、 一昨日の晩には咳も止み、どうやらようやく治まった。 ここ数ヶ月。身辺には悲喜交々、様々な事柄が去来し、 心模様落ち着かぬままに、もう師走の声を聞いて居る。 冷たい雨が束の間、霰に変わり、再び雨へと戻れば、 鼻先を刺す空気は、つんと鋭い。堪らず衿元を押さえて 屋内に駆け込むと、薬缶からなみなみと湯を注いで、 白い湯気に人心地。カップを囲った両の掌に血が通い、 程無く、じんわり…
|日々| 郵便局まで小包を出しに行った帰り道。 遠く山肌を見やれば、ここ二日程の間に すっかり、赤黄と色づいて居たのだった。 近頃の秋と云ったら短くて、いつ来たのだか。 いつ去ったのだかも曖昧に、冬を迎えてしまう。 心づもりの整わぬ間に。僅かの戸惑いの内に。 今年もまた、こうして秋をしみじみせぬまま、 気付けば冬と入れ替わって居るのだろか。 頬で、額で、測る空気は、乾いて冷たい。 襟巻きをぎゅうとやって、くんと風をかぐ。