双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

雨の休日

|日々|



朝目覚めると、外が薄暗い。雨の音。
七時の給餌後、再び寝床へ戻った猫たちは、
横腹をゆっくり上下させながら深い眠りの中に居て、
耳を澄ますと、互い違いに寝息が聞こえてくる。
彼らの眠りを断つのが躊躇われ、
一旦手にした掃除機を、そっと元へ戻した。
空になった二つの皿を洗い、
ソファの上へ重なった洗濯物を畳む。


窓硝子に雨粒が流れ落ちる傍らで、
珈琲とトーストの遅い朝食のよな昼食。
J・テイラーの歌を聴きながら、
BRUTUS』の東京案内を読んだり、
高峰秀子のエッセイを読んだりして、
静かな雨の午後を過ごす。


夕刻になって雨が上がると、薄い靄の中へ
雨上がりの匂いを纏った湿気が、
動きも無く、只むうと立ち込めて居る。
猫たちに其々の夕飯を与えた後、
明日の仕込みのため店へ下りて、一仕事。
小一時間程して部屋へ帰ると、玄関先で
二匹雁首揃え、きょとんとした顔で待って居た。
「休みの日に、どうしてエプロンして居るの?」
「一寸ね、仕事しなくちゃいけなかったんだ」
踝の辺りへそっと寄って来た若旦那が、
頭をやさしくすり付けた後、
真ん丸の目でこちらを見上げて
くるる、と一つ。小さく鳴いた。
ご苦労様、と云われた気がして嬉しくなって、
有難うね、と背中を撫でてやった。

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