双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

季節外れ

|日々|


暦は六月も半ばを過ぎ、梅雨を迎え、
いつに無く肌寒い日が続いて居る。
夜などは肌寒いどころか、全く立派に寒いもので、
律儀に衣類から夜具から季節様のものと
入れ替えてしまった手前、今更寒いからと云って、
押入れから引っ張り出すのも口惜しく、
半ば痩せ我慢だけで凌いで居たのだが、
ここ数日は、それもいよいよ馬鹿らしくなってきて、
已む無く薄手の膝掛けを一枚だけ、引っ張り出した。
しかし、腰から下はそれで何とかなっても、
半分は如何ともし難い。
かと云って、一冬過ごして手洗いし、
折角仕舞った冬物のカーディガンを、
この期に及んで再び出さねばならぬのは、
できれば避けたいと想う。


あ。そう云や、あれが在った。
知らぬ間に電気ストーヴへ近寄り過ぎたのか。
片袖を焦がしてしまい、この冬で御役御免となって、
資源ゴミ行きの衣類の束にまとめてあった、綿入れ。
それまで重宝して居た祖父のお下がりを、
同じ失態から焦がしてしまい、
私が中学生の頃に着て居たのを、
その代役として、昨年実家から持ち帰ったものである。
思い出して早速に納戸へ行き、
ビニル紐を解いて、一時凌ぎに復帰させた。
束の一番下でぺしゃんこのしわしわではあったが、
背に腹は変えられまい。
そして、当然のこととは云え、
冬の名残りの一切無いこの部屋の中に在って、
まるきり季節外れの風体の私だけが、
実に間抜けで、何処か滑稽なのだった。
そんな己自身の有様を可笑しく想いながら、
ふと、今年の冬、新たに買い求めるべき綿入れについて、
あれこれと思案を巡らせては、いつの間にかほくほく
となって居ることに気付いて、再び自分を笑った。

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