双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

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嫌いじゃない

|日々| 朝、叩き付けるよな激しい雨音で目が覚める。 カーテンの隙間からは、暗い朝が覗いて居て、 既に薄暮の終わり程の気配だった。薄暗い。 そのまま再び枕に頭を預け、浅い眠りへ戻る。 もぞもぞと、収まりを求めて脚を動かすも、 夜具の深くへ潜った猫は、ぴくりともしない。 昼近くに寝床を出ると、雨足はさらに強まって、 空は変わらぬ鉛色して物云わず、押し黙ったまま。 秋の冷たい空気が、蛇口から流れ込んでくる。 嗚呼、そうだった。こんな一日は嫌いじゃない。 一日中仄暗くて、雨降りで、…

風景

|日々| 本日の店模様は、ちょいと素敵だった。 買い物袋を下げた、近所の小母ちゃんの 三人組は化粧っ気の欠片も無く、なりも 髪もお構い無し。上唇の周りへうっすらと 産毛でも生やして居るよな風で、一人は 痩せぎす。後の二人は、がっちり逞しい体躯だ。 アイスコーヒーには、たっぷりのガムシロップ。 チューリップの球根やら、豆腐の旨い食べ方やら、 話題は日々の些細。卓上の煙草はセブンスター。 つっかけたサンダルを、気だるそうにぶらぶらと させながら、すぱ〜っと煙草をふかして居る。 嗚…

|日々| 長い夜を過ごして、寝床を出たのは昼の頃。 カーテンを明けても部屋は暗く、細く開いた 隙間から、びゅうと低く鳴った風が窓を震わす。 台風が近付いて居るな。一旦は止んだ雨の合間に 海の荒く畝る様を浮かべて、新聞を取りに表へ出ると、 ひどく風が冷たい。新聞の他には、郵便が三つ。 カーディガンを取って羽織り、窓際に昼食を寄せる。 人心地ついた後、珈琲の傍らに新聞を広げて 選挙の様々を確認して居ると、突然に遠くで轟々と 風の唸るのが聞こえた。ふと、目を上げ耳を澄ます。 山の腹…

墨夜

|日々| 昨日行く筈だったのをうっかり忘れたので、 本日午後、頃合を見計らって期日前投票を 済ませに出向く。今回は衆議院に加えて*1 県知事選も重ったため、こちらは現職及び その他有象無象は端から外して、若者に一票。 比例区の投票用紙を配る女性が、今時珍しい くらいの厚化粧だったもので、一瞬ぎょっとし、 話を聞くふりをして、まじまじと見てしまう。 要領の悪い左官が漆喰を塗り付けたのか。 化粧が80年代を、頑なに引き摺って居た。 投票を済ませて表へ出ると、西日がきつい。 帰りが…

ただいま

|日々| ここ数日と云うもの、猫が寝床をせがむ。 確かにそうだね。薄ぺらい夏掛けが一枚 きりでは心もとないが、まぁ。入りたまえ。 季節が去ろうとしている。今夜の三日月は 冴え冴えと青白い。寝巻きを長袖に代えて、 夏掛けの上に一枚。大判の膝掛けを乗せた。 そしてもう、毛糸のことを考えて居る。 |音| おかえり、秋。 Simone White 『Yakiimo』 は ricohet さんが紹介してらした。 この声に、佇まいに。心はふるると鳴るのです。 ■Pieces of Tue…

風の無い日

|日々| 件の元・食堂中古物件は、先頃買い手が決まったと聞く。 そうか。決まったか。只、そう聞いても然程に口惜しく 無いのは、恐らく。ざわざわと寄せた細波に、是だと 確信めいたところが足りなかったから、かも知れない。 要は縁が無かった、と云うことだ。次はいつとも知れぬ 機とやらを、構えずのんびりと待つとしよう。 今の今までしらばくれて居たくせに、何を想ったか。 残暑の奴め、急に現れた。小虫は飛び交い、蝉は鳴く。 むわとした熱が、風の無い、だらけた空に上ってゆく。 午前中遅くに…

夏の抜け殻

|日々| |電視| 盆休みの明けた途端に間延びして、まるで 夏の半分が去ってしまったよな火曜日。 残った半分は、電信柱にぶら下がって、 抜け殻みたいに、ぽとり。落っこちるかな。 お昼に豆腐のハンバーグ。大根おろしと青紫蘇を 乗っけて。一口をゆっくり、良く噛んで食べる。 陽が暮れると、またひとつ涼しい。 ゆるゆると一日を仕舞って、虎造節を聞きながら 洗濯物を畳む。と、最後に残った靴下の片方が足りない。 ああして小さく膝を抱えた姿のジョーは、良い。 影さした横顔の、淋しさの淵には…

空っぽ

|日々| 山へ行く。そう決めて、日曜の晩の内に弁当を拵えた。 通勤時間帯の電車と、路線バスを乗り継いで辿り着いた 終点のバス停は、山深い集落。僅かの民家は在れど、 人の姿は見当らない。登山口のすぐ手前まで車で入れる と云うが、そんなものに縁の無い者は、ひたすら歩いてゆく のみである。しかしそれで良い。登山口までは延々と砂利 敷きの林道が続き、山間の長閑な田園の眺めが伴をする。 途中、蛇の死骸に出くわして、季節柄仕方が無いとは云え、 できれば遭遇したくないものだなぁ、などと想う…

紫陽花と南京豆

|日々| 空模様が怪しい。聞けば、いよいよ関東地方も梅雨に 入ったのだと云う。未だ整わぬ心づもりと季節の齟齬の 埋まらぬ内に、早速、むうと白く濁った霧が降りてくる。 煩わしい湿り気を帯びた、梅雨入り頃の重たさと云うのは 存外厄介なもので、容易に刎ねつけることがままならない。 だらり。弛んだまま纏わって、首の後ろの付け根辺りを 鈍くする。そうなると一体、浮かぬ顔して過ごすこととなる 訳なのだが、ところでどうかした拍子に、紫陽花のことなど、 ふと想い起こしたか。夕刻には少々の気を…

にわか雨

|日々| 独り住まいの大叔母が、翌週に引越しを控えて居るのだが、 高齢に加え、腰の塩梅が宜しくないのだとかで、要るもの 要らぬものの整理や、細かな準備が出来て居ないと云う。 母と二人して午前中より手伝いにゆくが、入ると案の定。 何一つ手を付けて居ない状態だ。以前より大方の予想は ついて居たとは云え、手際云々の話では無しに、やはり 八十の老人に引越しのあれこれは無理、と改めて痛感する。 余りの整理つかずの雑多に、気の毒だがこちらで判断して、 要らぬと想うものは、こっそり処分させ…

いつか窓から良い風の入る日

|日々| 少しずつ、不要なものの片付けを始めた。 日々おこなう掃除とは、恐らく、違って居る。 誰かが使うかもだとか、いつか必要になるかもだとか、 不精の云い訳に 「かも」 をくっつけては、今まで ほったらかしにしてあった様々を、毎日少しずつ。 抽斗に押し込めたまま仕舞ってあるもの。 目に見える場所で埃をかぶって居るもの。 片付けながら、これらは皆、今の私の心の在り様と 同じなのではなかろか、と気付いて、どきりとした。 永いことかかって段々に溜まって居た、知らぬふり、 気付かぬ…

風をかぐ

|日々| 風があんまりにも爽やかで、新緑が清々しく薫るので、 何処かへ行きたいとは想ったのだけれど、FMラジオに 日がなバッハを聴きながら、穏やかに家で過ごそう。 カンタータ78番。30番。五月の空。雲の白。 これからは着ない厚手のを仕舞い、代わりに薄手の 木綿のシャツなどと、抽斗の季節を入れ替えた後で、 折角のついでだから、着物の箪笥も整えるとしよか。 全部をたとう紙から取り出して、再度。一枚一枚 畳み直す。ああ、夏銘仙か。懐かしい。時折の道草。 種類ごとにざっと分けたら、…

掌の温度

|日々| ここから眺める薄淡い山桜の佇まいは、山中に ぽかりと浮かんだ、小さな島の群れのよにも見える。 実に長閑な眺めだのに、菫色した夕闇が降りて来ると 途端、おどろおどろして、ひどく幻想的な風になるのは、 知って居てもつい、ぞくりとなる。昔から、こう云うもの には何処か。戻って来られない所へ、ひゅうと連れて 行かれる気がして、どうも落ち着かない。おっかない。 手持ち無沙汰にくすんだ空の下へ出ると、間も無く。 ひんやり涼しい風に紛れて、細い春雨の路面を湿らす 埃っぽい匂いが、…

飛行機乗リハ眠ル

|日々| 早朝六時。 傍迷惑な間違い電話で叩き起こされた。 まったく不躾に、何処の阿呆が。 半分閉じた瞼のまま、憮然。 猫を起こさぬよにして、のろのろ寝床へ引返し、 再び目の醒めたのは、正午前。今日も今日。 外出の心づもりは無いから、家事に過ごす。 すっかり籠一杯になった洗濯物を 先ずは片付けねば。寝台からシーツをはがし、 荒く丸めて籠の余剰に詰め込む。 寝癖の上からほっかむりして、 洗濯機の廻る間に掃除。 春の奴は何処かで足踏み、未だここへは届かない。 さっさと来て、さっさ…

春の夜

|日々| 疾うに日の暮れた彼岸の中日は、冷たい風の轟々低く唸る中、 しかし止むを得まいなぁ、と切らした煙草を買いにゆく。 もう必要無いかと想われた毛糸の肩掛けを、出掛けの不精で ぐるり首に巻き付け、草臥れたカーディガンの前立てを、 固く閉じ押さえた格好で、独り。向かい風に苦々しく 目を細めて前がかりに歩けば、一寸先の夜道の辻に、 どろりと濃い墨を垂れたよな闇が、ぬうと無言でぶら下がって居た。 幾つになっても、誰であっても。こんな風な暗がりは、 やはり、気持ちの宜しいものでは無…

春霞に似て否なる哉

|日々| 春霞と見紛う程、空に季節の異物が舞って居る。 こんなものは見るのも吸うのも、真っ平御免であるが、 今更どうと云ったところで、仕方あるまい。 首から上、何処も彼処もむわむわとむず痒い不快感を、 ずるずると日がな引き摺り、しょぼくれた両の目に ぽとり、目薬をたらす。これさえ無かったなら、 ほんの幾らかでも、春を好く理由が見付かるやも 知れぬのに、と常々想う。相変わらずの午後。 たとえ不恰好であっても、背に腹は替えられない。 眼鏡の上に大袈裟なマスクを付け、うぅと洩らしな…

カップの中の野生

|日々| 就寝前や体調の傾いたときに飲んで居る、 気に入りのハーブティーのティーバッグの尻尾。 この尻尾の紙切れに、何やら気の利いた言葉が さり気無く書かれて居るのだけれども、何れも ひとつひとつ違って居るから、是が飲む度に愉しみで、 飲み終えた後も、紙切れを糸から外しては、 手帖の頁にぺたりと貼り付けてとっておくのが、 近頃の慣わしとなった。以前はただの商品名が入っただけ であったのが、少々前にパッケージを新たにしてからは、 このよな粋な計らいも加わって、お茶の時間が待ち遠…

月曜の匂い

|日々| 目覚ましの要らぬ月曜の寝床を、ゆっくりと出て、 顔を洗い、窓を開け、箒をかけ、ちゃぶ台を拭く。 遅い昼食を摂った後、これと云った予定の無い午後は、 七割程まで進んだショールの編み棒を、ちくちくと 動かしながら過ごす。夕刻、煙草を切らして外へ出ると、 何処かの家から、夕飯の支度の匂いが流れてきて、 うっすらと日の傾いだ、薄暮の冬空に消えてゆく。 ひゅうとひとすじ。冷たい風に吹かれて、 カーディガンの襟を、きゅっと閉じた。

薄甘い午後

|日々| |手仕事| この冬は、手袋を幾つ編んだだろか。 細い雨のそぼ降る、とろりの金曜は客足も遠く、 ほうじ茶と珈琲飲み飲み。黒豆を薄甘く炊いたのを つまみながら、一日中、編み針を動かして居た。 先週仕上がったラグランのセーターは、今日、 初めて袖を通した。胸の上の切り替えから、 鹿柄の編み込み模様が、ぐるりと入って居り、 随分とゆったりめであるわりには、思いの外 軽くて、一枚でも充分あたたかい。 如何にも手編みと云った風なのが、丁度良い 匙加減の野暮ったさで、小さな愛着が…

新年

|日々| 元旦は、海で神輿と初日の出を拝み、 早い朝の清々しい空気を、胸一杯に吸い込んで。 拵えたおせちと雑煮で、新年を祝う。 一段と厳しい一年になるだろうけれど、 小さく、つましく、誠実に。 丁寧に暮らしてゆけたら、と想う。 新年、明けましておめでとう御座います。 新たな年も、どうぞ宜しく。

小さな日記より

|日々| 年内の仕事も仕舞い、件の野暮用も何とかやっつけ。 今年はおせちも拵えた。いり鶏に黒豆、松前漬け。 昆布巻き、たたき牛蒡、柚子巻き、などなど。 明日はこれらをお重に詰めて。慌しいながら 仕事も用事も終え、ほっと安堵の心持ちで、 明日の大晦日を迎えられる、有難さ。 とは云え、おせちの仕込み中に、何やら知らぬが カッカしながら葱なぞ刻んで居ったらば、 左の人差し指をざっくりやってしまった。うぅ。 今年一年も、こうして日々のあれこれを綴ることで、 何かが繋がったり、何かを感…

師走の窓

|日々| 本日は恒例の餅つき。朝早くから準備に取り掛かる。 今年は父方の叔父連、従兄弟や弟らの男手が集まり、 つき手が充分に足りたので、かなり助かって。 開店時刻を少しまわった頃、皆に振舞う餅と 各親類用の伸し餅、硬めについた鏡餅など、 総計七臼、全ての餅をつき終えることができた。 男手も女手も、皆で餅を食べ食べ、人心地。 たまり醤油漬けの紫蘇の実で味付けした、 大根おろしの餅が美味しくて、ついつい箸が進む。 午後は午後で、掃除の仕上げと窓拭き。 日差しが暖かく、乾いた冬空に…

冬至

|日々| |音| 風の強い日曜日。とつとつと暮れる夕空を眺め、 今日は冬至だねぇ。ぼこっとした柚子を手に手に、 のらりくらり、皆で話して居った筈だのに、 人の相談事を聞くなどして、やがて夜を迎えたら、 嗚呼、柚子湯。すっかり忘れてしまって居た。 気を取り直して、寝台の夜具を取り換え、 へこんだ羽枕の形を、ポンポン、整える。 鞄の中を整理したり、メモ帖に覚え書きなど 書き付けたりしながら、湿った髪の乾く頃。 明日が、目覚ましの要らぬ朝であることを想い、 こそっと小さく、独り安堵…

冬の中

|日々| |音| 外出にコートを羽織ると、ただそれだけで、 自分が冬の中に在ることを、感じ入る。 冬の出で立ち。冬の心地。 月曜日。通り慣れた小高い丘に沿う道が、 前日の雨に散った銀杏の葉で、すっかり 黄色に埋まった上を、滑らぬよにして歩いた。 誰ともすれ違うこと無く、林はしんとして。 ポッケの中のマッチ箱が、かさと鳴る。 夜の部屋で編み針を進めながら、 ただぼんやりと、想い出す。 Lilac Timeアーティスト: Lilac Time出版社/メーカー: Universal…

畳む 夜

|日々| 仕事を終えて部屋へ戻ると、先ず風呂場へ向かって 湯沸かしのつまみを、まわす。風呂の沸く暫しの間、 取り込んだ洗濯物を、居間にどさり降ろして、一呼吸。 洗濯物を前に、背すじ伸ばして、正座する。 箪笥の行き先ごとに、ざっと仕分けてから、 靴下。シャツ。ズボン。手拭い。肌着。 一枚一枚。手で皺を伸ばし、馴染んだやり方で。 畳んで重ねて。音楽もかけず、テレビもつけず。 しんと静かな厳かさ。けれども小さな、 やわらかな安堵の中で、落ち着いた心地で。 畳む時間は、私にとって、自…

|日々| いよいよ冬だよ。と、空気が告げただろか。 鉛色の空に、雲が寒々と滲む。 夜具のシーツを、フランネルのものと取り換えた。 手持ちの毛織の布から拵えた、新しい湯たんぽの カバーは、英国紳士の顔した深緑の格子柄で、 ふと、狩猟好きの紳士のかむった、鳥打帽を想う。 小さな火。ふつふつと音をたてる丸い鍋の中に、 もう、冬の匂いが生まれて居る。 あたたかな、匂い。 冬の色。

十一月の便り

|日々| 秋晴れの日曜日。昨年初めてお会いしてから 早いもので、もう一年が経とうとして居る。 冬が来て、春が来て、夏が来て。秋。 季節は巡り、今年も同じ十一月に。 遠方より再び、Tさんご夫妻が訪ねて下さった。 心そわそわと、朝は早くに目が醒めて。 からりと澄んだ空に、やわらかな秋の日差し。 こんな日にお二人をお迎えできて良かった。 オーボンヴュータンの凛々しい焼き菓子と、 ご主人の選んで下さった選曲集のお心遣い。 中に挟まれたスリーブは奥様の手作り。 水彩画のよな薄い色合いの…

繋ぐ

|日々| 今週ようやく届いた毛糸で、数日前より早速に カーディガンを編み始めた。折角だから ゆっくり時間をかけて編もうと想って居たのに、 こう云う性分故、つい先を急いで夜更かしなどして、 今日までには後ろ身頃と、前身頃の片方を幾らか 編み終えてしまった。身幅が狭いよな気がしたので、 試しに羽織って合わせてみると、軽くてあったかで。 市販の機械編みの品には無い、ふくよかな編地に、 やっぱり手編みは良いものだなぁ、としみじみ。 相変わらず、世知辛いことは少なくないけれど、 こんな…

重ねる

|日々| 一日一日は確かに、二十四時間の速度で 過ぎてゆくのに、一週間の区切りでもって 振り返ったときには何だか、やけに速いよに 感じられて、それがまたひと月となると、 拍子抜けする程、あっと云う間のことと想えてくる。 九月を過ぎると、それまでと刻の流れが一変するのは 何故なのだろ。暦の上ではあと二ヶ月だけれど、 十二月の終いは恐らく、すぐ其処に在る。 去年の今頃は一体何をして、何を感じていたのかな。 そんな風に、ぼんやりと思い巡らすのはいつも、 秋の始まりを半ば、過ぎてから…

香る

|日々| もわんと生温い、調子外れな陽気が昨日より続き、 秋晴れと呼ぶには、些かの違和感も在れど、 折角のお天気であるから、シーツなど大物の類も 片っ端から洗濯しては、バサバサと干す。 十月に入ってからの風には、金木犀が香り、 せっけんの清々しさに、薄甘くかぶさる。 仕事の合間合間、明日の青空珈琲の準備に あれこれと追われ、気忙しいままに店を仕舞った。 挽いた豆よりこぼれて、散らかった粉を さらさら集めれば、夜にふわりと珈琲が香る。

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