双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

いつか窓から良い風の入る日

|日々|


少しずつ、不要なものの片付けを始めた。
日々おこなう掃除とは、恐らく、違って居る。
誰かが使うかもだとか、いつか必要になるかもだとか、
不精の云い訳に 「かも」 をくっつけては、今まで
ほったらかしにしてあった様々を、毎日少しずつ。
抽斗に押し込めたまま仕舞ってあるもの。
目に見える場所で埃をかぶって居るもの。
片付けながら、これらは皆、今の私の心の在り様と
同じなのではなかろか、と気付いて、どきりとした。
永いことかかって段々に溜まって居た、知らぬふり、
気付かぬふりをしてきた、心の澱。
ゴミの袋にいっぱいになったのは、モノの形をした
私自身の心の澱なのだ、と気付いて、どきりとしたのだ。


壁に散らばった額も、抽斗の中も、ごたごたに並ばったのも。
何かを吹っ切るよに、要らないのは潔く、捨てる。
迷信めいた事柄を信じる質では決して無いけれど、きっと
こうしたものには、空気の流れを滞らせて澱ませる何かが。
もやもやとどんよりと、悪しき方へ作用するのかも知れない。
ふと、そんな気がした。日々の掃除では拭えない、
目には見えぬ、澱み。知らぬ間に溜まってしまった、澱。
心の在り様がモノに、モノが心に映される。良くも悪くも。
心疲れて、いつしか手付かずになっていた。あれもこれも。
澱みが、曇りが無くなれば、窓から良い風が入って来るだろか。
目に見える変化であっても、目に見えぬ変化であっても。
恐らくそれは、至極小さなことで、気付くか気付かぬかの
些細なことかも知れないけれど。傍目には相変わらずの
ごちゃごちゃと見えるかも知れないけれど。それでも。
いつも心の何処かにこの店を留め置いて、気に掛けて
くれて居る人の中には、もしかすると。何かの変わったことに
ふと、気付いてくれる人が在るかも知れない。
今はただ、心穏やかに風を待とう。
良い空気の流れは、きっと良い風を送ってくれる。
私の心もそうであれるよに。ささやかに、願いながら。

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