双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

畳む 夜

|日々|


仕事を終えて部屋へ戻ると、先ず風呂場へ向かって
湯沸かしのつまみを、まわす。風呂の沸く暫しの間、
取り込んだ洗濯物を、居間にどさり降ろして、一呼吸。
洗濯物を前に、背すじ伸ばして、正座する。
箪笥の行き先ごとに、ざっと仕分けてから、
靴下。シャツ。ズボン。手拭い。肌着。
一枚一枚。手で皺を伸ばし、馴染んだやり方で。
畳んで重ねて。音楽もかけず、テレビもつけず。
しんと静かな厳かさ。けれども小さな、
やわらかな安堵の中で、落ち着いた心地で。
畳む時間は、私にとって、自分の内側と向き合う
独りの時間。くさくさして帰って来ても、
打ち折れて帰って来ても。洗濯物を一枚ずつ、
そうして畳んで居る内に、荒げた波がすうっと引いて、
穏やかな心持ちが、ゆっくり、戻って来る。
畳み終えて、其々を其々の場所へ仕舞い終える頃。
丁度、程好い具合に風呂の湯が、沸く。

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