双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

風をかぐ

|日々|


風があんまりにも爽やかで、新緑が清々しく薫るので、
何処かへ行きたいとは想ったのだけれど、FMラジオに
日がなバッハを聴きながら、穏やかに家で過ごそう。
カンタータ78番。30番。五月の空。雲の白。
これからは着ない厚手のを仕舞い、代わりに薄手の
木綿のシャツなどと、抽斗の季節を入れ替えた後で、
折角のついでだから、着物の箪笥も整えるとしよか。
全部をたとう紙から取り出して、再度。一枚一枚
畳み直す。ああ、夏銘仙か。懐かしい。時折の道草。
種類ごとにざっと分けたら、秋冬の袷はまとめて下の段に。
その他の袷と単、薄物などは中と上の段に戻して、一段落。
遅い昼には、窓からの風が本当に気持ち良く、ゆったりして
バッハの調べに山を仰ぐと、ふうっと心が離れてゆく。
パンをかじり、珈琲を口に運び。誰も居ない山頂で。
こうして独りで風をかいで居るよな心持ちになって、
一つ大きく息を吸い込むと、様々の色の緑が目に眩しかった。

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