双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

十一月の便り

|日々|


秋晴れの日曜日。昨年初めてお会いしてから
早いもので、もう一年が経とうとして居る。
冬が来て、春が来て、夏が来て。秋。
季節は巡り、今年も同じ十一月に。
遠方より再び、Tさんご夫妻が訪ねて下さった。
心そわそわと、朝は早くに目が醒めて。
からりと澄んだ空に、やわらかな秋の日差し。
こんな日にお二人をお迎えできて良かった。
オーボンヴュータンの凛々しい焼き菓子と、
ご主人の選んで下さった選曲集のお心遣い。
中に挟まれたスリーブは奥様の手作り。
水彩画のよな薄い色合いの、ぽわんとしつつも、
背筋のしゃきっとして居る風なのが素敵で、
拵えたものとTさんの佇まいとが、ふわり、重なる。
日曜日の刻の進みは、ゆっくり穏やかに。丁度良い
頃合で客足も途切れたものだから、今回はご主人も
交えてお二人とお話する時間を、充分と持つことが
できたのだけれど、去年初めてお会いしたときと
同じに、何だか昔から知って居る古い友人のよな、
あの不思議な感覚は、やっぱり変わらない。
話の合間や佇まいの端々より静かに伝わって来る、
Tさんとご主人其々のお人柄に、つい心が緩む。
遅い午後の秋の光は、窓から斜めに低く差し込んで、
薄紙を一枚隔てたよな、ぼんやりと淡い色になる。
小さな田舎街の、何でも無い喫茶店の。
いつもと変わらぬ雰囲気を、お二人に感じて頂けただろか。
こちらこそ、素敵な時間を有難う。
こんなお店で宜しければ、いつでもいらして下さい…。

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