双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

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ぬるい茶

|日々| 猛々しい暑さと書いて”猛暑”と読む訳だが、 暑さなんてものが猛々しくあったところで、 迷惑千万、格好良くも何とも無い。 つい先日までは日中も比較的過ごし易く、 夜ともなれば、長袖の寝巻きと綿毛布の 仕舞えぬ涼しさが続いて居たここいらも、 いよいよ以って、猛暑を受け入れる気なのらしい。 蝉が鳴き、蛙が鳴き、草いきれにむせる。 知らぬ間に、藪蚊に食われた右肘の辺りを 恨めしく想いながら、ぬるい麦茶を飲み干す。

襟足の後悔

|日々| 昼過ぎからとの予報を裏切り、既に朝から雨。 古森号の出動を諦め、ズボンの裾を濡らしながら 徒歩にて出掛け、鍼灸院と散髪を梯子する。 施術時間が長引いてしまい、散髪に遅れて恐縮。 襟足どうしましょう。刈り上げなくて良いです。 不精に伸びた分、耳を出し、前髪を揃えるも、 帰る道中に、やはりこの場合の襟足は、 潔く刈り上げるべきであったなぁ、と想う。 駅まで出ると、丁度のバスが在ったので、 是に乗って帰宅し早々、チビ猫忍びに餌を与え、 その後で自らも昼餉。施術の影響で臀部…

ぼんやり昼餉

|日々| ついこないだ本領などと書いたばかりだのに、 雨の印象も薄いまま、気付けば梅雨が明けて居た。 かつての陰翳の情緒を欠いて久しい今の世、 梅雨なんてのは満喫する気にならぬけれど、 それにしたって、あまりに唐突であったことだよ。 すると、何やら妙にイカの塩辛が食べたくなって、 スルメイカを買い求め、是を塩辛に拵えた。 潰したワタへ生醤油と味醂。七味を少々。 季節柄、柚子の使えぬのが悔しいところだが、 昼餉の小皿へ盛り、キムチ漬けと共に食せば、 案の定ご飯がすすんで、茶碗に…

梅雨の本領

|日々| いよいよ以って、蒸し蒸しも本領と云った感。 若猫は長く伸び、子猫も又然り。 糠漬けをぽりぽりやっては、脱力し、 じわとした汗の出方に、四十路を理解する。 梅仕事が在るから辛うじて妥協するが、 暦の中では最も相性の良からぬ時節である。 この不快な夜を如何に過ごそうか、 只々、気抜けの上に放心を重ね、 と、窓を開けたところへ風が入って来た。 ばさばさと煩い、風情の欠片も無い風。 そう云えば、未だ蛙の声を聞いて居ない。

散髪と猫とパン

|日々| 午前中に散髪を予約してあったので、 久々に古森号を駆り出そうと想うも、 どうやら空模様が怪しい。 先週、念入りに整備したので、 調子見も兼ねたかったのだけれど、 仕方が無いのでバスに乗ってゆく。 案の定、美容室に着く頃にちらと降り出した。 初夏と云うので前髪も短く、さっぱり。 清々して、小雨の中を早足で大型店まで さかさかと歩き、がらんとした生地売り場を物色。 カーテン用のとモンペ用の生地を買い求める。 帰りがけ、パン屋へ食パンを取りに立ち寄ると、 軒下に小さな黒猫…

矛盾

|日々| 山は爽やかな新緑の様相であるが、 未だに湯たんぽの必要な夜が続くと云う、矛盾。 まことに納得のゆかぬ五月である。 天気予報の最高気温も殆ど当てにはならず、 しかしながら、うっかり是に期待し、 薄手のシャツなど着て、ぶると身震いすれば 何やら、自分が馬鹿か阿呆の様な気がしてくる。 旬となれば食べたくなる筈の、鰹のたたきですら、 食べたいと想えぬのが、実に哀しい。

冬、帰る。

|日々| 去った筈の冬が出戻って、哀れな春は所在無い。 しかし春と云ったって、目前に四月を控えながらも、 ここの桜は未だ蕾のまま、枝も寒々しく、 先週にようやっと木蓮が咲いたくらいであるから、 こちらは然程、面食らいもしないのだけれど、 当の春めとすればさぞや口惜しく、心苦かろうて。 箪笥よりセーターを取り出し、スボン下、 厚手の靴下などで、冬めいた身支度をする。 猫の毛皮は、再びむくむくとして居る。 冷えた蛇口に触れると、指先が反射的に離れた。

悪足掻き

|日々| 春霞に便乗したものか。 やれ花粉やら砂塵やら埃やら、 煩わしいのばかりが揃いも揃ったり。 山の姿などはすっかりこれらに埋もれ、 稜線すら殆ど確認できぬ有様であり、 其処へ暴力的春の嵐が吹き荒れれば、 さながらカオスの如き様相と相成り。 是だけ派手に好き勝手されれば、 マスクと眼鏡とで防備を整え、 薬を含み、目薬などさしたところで、 どだい効果の程度は知れて居る。 顔は何処も彼処も鬱陶しいばかり。 出来ることなら、目一杯の奇声をあげ、 是を一気にぐしゃっとやりたい衝動…

忙殺と充足

|日々| 只ばたばたと仕事に忙殺されるまま、 気付けば、時刻は午後四時も半ば過ぎ。 やっつけの昼餉を拵えて、是を食すも、 もはや疾うに昼とは呼べぬ也。 疲弊の澱みに遅々として箸の進まぬ中、 ジェームズ・コバーンやイーストウッド翁。 ユーコンの犬橇レース。更には 拙宅の若猫の艶々した毛並みなど。 脈絡無き、しかしながら心惹かれる事柄を 次々と想い浮かべるうち、満ち足りて、 ようやっと充電の完了した次第。

困惑

|日々| 昼を過ぎた頃から空が急に翳り出すと、 地響きを起こす程の雷が轟くと同時に、 棚の上の食器たちが震えて音をたて、 雨に混じった雹が窓硝子を叩く。 それを境に空気は変わり、 頬を刺すよな冷たい風が、北からやって来た。 季節はずれの空模様と、宙ぶらりんの困惑。 夜の部屋のつんとする冷気に、 そろそろ湯たんぽを出しても良い頃合かしら。 などと想う。

静かな部屋

|日々| 先週辺りから、朝晩がぐっと冷え込み出して、 部屋の支度に少しずつ冬物が増えて、 夜具に毛布を一枚足して、 シーツをフランネルのと換えて、 毛糸のカーディガンを着た。 猫は先代を真似て押入れに入って、 やっぱり先代と同じ場所で丸く眠って、 夜の空気はつうと冷たくなって、 そうして部屋はひっそり、静かとなった。 ちょっと寂しくて、けれども安らかで。 『ムーミン谷の十一月』みたいだな。

四角い蛙と金木犀

|日々| 逸れた台風の尻尾の名残りか、 朝からむわんと汗ばむよな陽気。 けれども午後に入って、 西の方から大きな雨雲が近付くと、 空が段々に暗くなる。程無く、大粒の雨。 幾度かの降ったり止んだりが続いて、 宵の頃には、いつの間にか終わって居た。 表へ出て、蛙の居場所を確かめる。 相変わらず四角い図体で、植木鉢の縁。 雨上がりのひんやりとした夜風の中に、 微かな、一握の、金木犀の匂いがした。 何処かで犬が、くんと鳴く。

入道雲と鱗雲

|日々| 日中の秋夏ないまぜの奇妙さ、相も変わらず。 見上げた空には入道雲と鱗雲が隣り合い、 秋の大運動会に集う人々は、真夏の装いである。 昼餉など、いったい何を拵えたら良いものかと、 冷蔵庫の棚をじいと見詰めては、溜息も出る。 是には猫で無くとも、いい加減にうんざりとし、 彼らの作法に倣って不貞寝、としたいところが、 しかしながら、当方の所属は人間であり、 曲がりなりにも、一応の仕事らしきも持って居て、 それで金銭を稼がねば暮らしてゆかれないため、 幾らうんざりだ、辟易だと…

海と散髪

|日々| 何やかや、ふた月も放ってしまった散髪へ行く。 事前に予約の電話をかけたところ、 月曜日は生憎朝の八時しか空いて居ない との事であったのだが、 たまには早い内に動くのも宜しかろうと、 日々徐々に馴染みつつある古森号に乗っかって、 団地の中を抜け、街場へと下り、其処から浜へ向かう。 夏休みだから、道中に通学の子供らの姿も無く、 すいすいと走るまま、二十分程して美容室に到着する。 少々行儀は悪いけれど、あんまり喉が渇いたもので、 途中に買い求めた珈琲牛乳を飲みながら、 不…

季節外れ

|日々| 暦は六月も半ばを過ぎ、梅雨を迎え、 いつに無く肌寒い日が続いて居る。 夜などは肌寒いどころか、全く立派に寒いもので、 律儀に衣類から夜具から季節様のものと 入れ替えてしまった手前、今更寒いからと云って、 押入れから引っ張り出すのも口惜しく、 半ば痩せ我慢だけで凌いで居たのだが、 ここ数日は、それもいよいよ馬鹿らしくなってきて、 已む無く薄手の膝掛けを一枚だけ、引っ張り出した。 しかし、腰から下はそれで何とかなっても、 半分は如何ともし難い。 かと云って、一冬過ごして…

無意義の日

|日々| 火事と親爺こそ無かったが、地震と雷には事欠かぬ一日。 老婆心丸出しで、ぶつくさ云い、しぶしぶ諦めて過ごす。 デジタル写真機の設定を見直したり、調節したり。 財布の中身をひっくり返して掃除したり、繕ったり。 紙を切ったり、貼ったり。線を描いたり、消したり。 何れも必要であったと云えば、確かに必要であったに 違いは無いのだが、些かも有意義とは程遠く、鼻から溜息。 最後に熱いほうじ茶淹れて、今日を終いとした。

猫と休日

|日々| |若旦那| やけに長かった気のする一週間を終え、爽やかに目覚めた月曜の朝。窓を開ければ、吹く風の幾分涼やかな晴天なり。口端のヘルペスをうっかり忘れて、またしても歯ブラシの柄をあててしまい、ううと呻く。嗚呼、厄介だ。面倒だ。 洗濯物を干しに表へ出ると、山はいよいよ新緑の季節と云った感。休みではあったが、別段出掛ける予定も無いので、一通りの家事を済ませた後に、私事の整理や読書。若旦那の遊び相手などして過ごす。 猫タワー最上段のくぐり穴から、主を挑発。それでお前は満足か?…

家事と買出し

|日々| 気持ち良く寝床を出れば、何と云う家事日和だろ。 早速に窓を開け放って、からりと晴れた空気を通す。 雑巾絞って床拭き、窓拭き。シーツを放り込んだ 洗濯機を回す間に、トイレや風呂場など。水周りの 掃除を隅々まで済ますと、清々と風通し宜しく、実に さっぱりとする。いよいよこのトイレブラシも寿命か。 そう云えば、風呂の入浴剤も残り僅かだったかな。 買足しの必要となった品を、ささとメモに書き留め、 在り合わせで拵えたサンドウィッチと珈琲で昼食を 済ませた後、先日書いた矢先で些…

ものぐさの帳尻合わせ

|日々| 春の奴め。 今頃になって、ようやく重い腰を上げたと見え、 桜に木蓮に辛夷、其処へ終いの頃の梅まで、 全て一緒くたにして咲かせて、 無理矢理の帳尻を合わせる魂胆らしい。 まったく、ものぐさなことだよ。 など独り胸の内へぼやきながら、 小皿の上の胡瓜と蕪とを、交互にぽりとやり、 どうやら糠床の仕上りの首尾よく運んだのを 確かめて、しめしめ、と想う。

ひと月

|日々| 爺様が逝って丁度ひと月。初めての月命日を迎えた。 若旦那がやって来たのは、丁度二週間前の今日だった。 当たり前のよに、そっと静かに重なり合う、二つの魂。 寒風の中にも、からりと晴れた冬空は何処までも澄んで、 桶の水に手指を悴ませながら、午後。窓硝子を磨いた後、 黄緑色したポンポンの小菊を買い求めて、爺様に供えれば、 寂しいのと、あったかなのとが、入り混じったよな心持ち。

雨と薬缶

|日々| 喉に覚えた違和感が、軽い風邪を長引かせたか。 暫くの間、煩わしい空咳が続いて居たのだけれど、 一昨日の晩には咳も止み、どうやらようやく治まった。 ここ数ヶ月。身辺には悲喜交々、様々な事柄が去来し、 心模様落ち着かぬままに、もう師走の声を聞いて居る。 冷たい雨が束の間、霰に変わり、再び雨へと戻れば、 鼻先を刺す空気は、つんと鋭い。堪らず衿元を押さえて 屋内に駆け込むと、薬缶からなみなみと湯を注いで、 白い湯気に人心地。カップを囲った両の掌に血が通い、 程無く、じんわり…

とまどい

|日々| 郵便局まで小包を出しに行った帰り道。 遠く山肌を見やれば、ここ二日程の間に すっかり、赤黄と色づいて居たのだった。 近頃の秋と云ったら短くて、いつ来たのだか。 いつ去ったのだかも曖昧に、冬を迎えてしまう。 心づもりの整わぬ間に。僅かの戸惑いの内に。 今年もまた、こうして秋をしみじみせぬまま、 気付けば冬と入れ替わって居るのだろか。 頬で、額で、測る空気は、乾いて冷たい。 襟巻きをぎゅうとやって、くんと風をかぐ。

Hello. Farewell. Somewhere.

|日々| 二年ぶりに会いたかった人と会って、 いろんな話をして、後姿を宵の中へ見送った。 一日を仕舞い、夜。布団に入って目を閉じると、 沈んだ枕の、洗い髪がうっすら湿ったところから、 自分の体温がじんわり、皮膚を伝って流れてくる。 心地良い眠気。数時間前の、ゆるやかな記憶。 この世界の何処か。行きたい場所へ、行けますように。 今年も訪ねてくれて有難う。またお会いしましょう。

清々

|日々| 昨晩に小さく開けたまま眠った窓から、不意に肌寒い くらいの風がすうとひとつ、入り込む。枕元の時計を 大儀に見やると、未だ四時半だった。そのまま再び 眠りへと戻る。台風一過。温帯低気圧の去り後。 十時に起床してすぐに、窓と云う窓を全て開け放ち、 湿ってばかりだった部屋の中へ、ようやく清々と乾いた 風を通す。箒を掛け、床を拭く。久々の布団を干しに 表へ出れば、お天道様の下で手摺が熱い。けれども。 前髪と額の間を抜けてゆく、からりと澄んだ空気には、 確かにあの馴染み深い、…

苦瓜三昧と二、三の事柄

|日々| 先日、お隣から大量のゴーヤーを頂戴したものだから、 副菜には暫くの間、ゴーヤーばかりが続きそうである。 まとめて下処理したのを、ピクルスやらナムルに調理し、 ナムルついでに、チャプチェなんぞを拵えて昼食とする。 Aちゃん、海苔の上に御飯とチャプチェを乗せて巻く。 なかなか旨い、とのこと。食事の捗るのは良いこと也。 折角の写真機を手に入れたのに、未だ一度も出掛けられず、 専ら爺様相手に使うのみ、となって居る。是ではまるで巷の 親馬鹿と何ら変わり無いではないか。否、待て…

家事と老猫

|日々| この貴重な晴天を無駄にするまい、と家事に徹する一日。 それではあまりに味気無いので、爺様ポートレイトで茶を濁す。 おお、ヴォワイヤン。

合流点

|日々| 西日のようやく落ち着いた頃、鉢植えの水遣りに 表へ出ると、息苦しいくらいの熱気の中へ、北から ひんやりした風が伸びてきた。ジョウロを手にして 水場へ立てば、左側はむわんと。右側はひんやりと。 丁度、身体は二つの違った温度の合流点みたいに。 奇妙な悪戯でもして居る心地で面白がったものの、 その内、気味の悪い胸苦しさを覚えて、すごすご退却。 やがて外気は北風の優勢となり、大きな雷を連れた 雨の加わったお陰で、幾分なりと落ち着いたのだろか。 アスファルトへ落ちた雨音が、車…

匂い

|日々| 窓へ仕立てた蔓はこの夏、あっと云う間に伸び育ち、 小さな掌を広げたよな緑の葉を茂らせた。 開いた窓際まで昼食を運んで、コップの水を飲む。 匙を置いて、葉の隙間に程好く遮られた表を眺めやれば、 すうと気持ちの良い風が入って来る。と、 照りつける陽射しに、アスファルトのちりちりと 焼ける音が聞こえてきそうなところへ、不釣合いな遠雷。 真っ青な夏空から、先ずは、ぽつり。 程無く、ざあと大粒の雨が降ってきた。 あ。むうと立ち上ってくるこの匂いは、確かに、 熱に焼かれた路面と…

八月草想

|日々| くぐもった雷鳴を懐に隠した積乱雲の下で、だらり。 緩んだ熱風だけがようやく動いて居る、土曜の午後。 薄暮を待って使いへ出れば、幾らかはしのぎやすくて、 道路脇に小学校の敷地をぐるり囲む、背高の立派な 木々の中から、蝉と云う蝉が、自棄でもおこしたみたい にして鳴いて居た。けれども僅かの風がすっかり 凪いでしまえば、やっぱりむうとなって、のろのろと 歩いて居るのに、対峙した風景が、不意にひとつの ぬるい塊となったところへ、束の間時間は止められて、 只、間抜けにつっ立って…

通り雨の後

|日々| 突然に空が真っ暗になって、分厚く覆った雲から バケツをひっくり返したよな雨が降り出した午後。 半時程して止んだ後、表へ出て雨上がりの匂いを くんとやり、朝顔の鉢へ目を落とすと、少し育った本葉に 大きな雨粒が乗って居た。其処へすうと涼しい風が来て、 散髪したばかりの前髪を通り抜けるのが、心地よい。 電線に烏がカァと鳴けば、次いで山鳥もピチチと鳴く。 "No man is an island,entire of itself..." ― John Donne 今日飲んだ…

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