双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

八月草想

|日々|

くぐもった雷鳴を懐に隠した積乱雲の下で、だらり。
緩んだ熱風だけがようやく動いて居る、土曜の午後。
薄暮を待って使いへ出れば、幾らかはしのぎやすくて、
道路脇に小学校の敷地をぐるり囲む、背高の立派な
木々の中から、蝉と云う蝉が、自棄でもおこしたみたい
にして鳴いて居た。けれども僅かの風がすっかり
凪いでしまえば、やっぱりむうとなって、のろのろと
歩いて居るのに、対峙した風景が、不意にひとつの
ぬるい塊となったところへ、束の間時間は止められて、
只、間抜けにつっ立って居るだけのよな気がしてくる。


買って帰ったところてんを茶碗に移して、是をつるつると
やって居ると、山を越えた何処か遠くの方から、ぼーん。
またひとつ、ぼーん。恐らくは大きかろう花火の音だけが、
ここへ低く届いては耳に名残り、ほんの僅か菫色の滲んだ
暗い夏の夜には、縦に等分した西瓜を、ひょいと持ち上げた
みたいな格好して、月の半分が、白々と浮かんで居た。


ふと振り返った一週間が、如何に早く感ぜられようとも、
一日一日を切取ってみれば、こんなにも間延びして居る。

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