双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

山の道

|散輪|


ここのところ、平らな道ばかりを選んで居た反動であろう。すると今度は、あれほど避けて居た坂が無性に恋しくなってきたのである(笑)。そうとなりゃ、いっちょ登りに行ってみるかね、ってんで午後一時。おやつとおむすび、麦茶を積んだらグワイヒア号で出立。

田んぼ道から県道Aへ出て越境、以前に走ったコース()から先へと脚を延ばして、県道Bを西へ西へ。比較的緩やかな勾配の坂を登れば、程無くダムに至り、ここでほんの少しだけ休憩し先へ進む。この県道は山間の集落を幾つも抜けながら、更にその奥の山へと続いてゆく道であるが、いつだかの登り一方な地味県道()とは全く趣きが異なり、差し詰め”ゆるクライム”とでも云おうか。登りの中に平坦も下りも程好くミックスされて、長閑で愉しい山の道なのだ。勾配のきつい区間は在るものの距離は短く、又アップダウンの配分が実に上手い具合なもので、疲弊することなく、気持ち良く走り続けることができるのが嬉しいし、広域農道との分岐点を過ぎれば、車の往来も減って静か。

日差しは結構在るけれど、風が爽やかで清々しいなぁ。と登り坂の途上。上の方から白いロードバイクが実に颯爽と下って来る。紺色のサイクルジャージを着た、長身で細身の殿方であった。「こんにちはー!」「こ、こんにちはっ!」爽やかな笑顔と全く嫌味の無いそのスマートっぷりに、心の中で「ロード紳士じゃのぅ…」と呟くワタクシ(笑)。
その後も田畑で草を刈る小父さんやら、蛇の死骸やらを目にするなどして進むうちに、やがて小さな屋根付きのバス停が見えてきた。数年前、フォルゴーレ号で来た際にも休憩したバス停。是が又、丁度良い塩梅の場所に在るんだ。今回もここでひと休みである。グワイヒア号を停め、古びた木のベンチに腰掛け、蒸しパン食べて麦茶を飲む。屋根が掛かって居るので日が避けられるし、向かいの田んぼからは風が渡ってくる。

のんびり憩いながらここまでの道中を振り返り、そう云えば、以前みたいには登りが嫌だと感じなくなって居たことに、ふと気付いた*1。今までなら即、インナーギアにして登ったであろう勾配も、今日はアウターのままで十分いけた。乗り方が徐々に分かってきて、必要な筋力が備わってきて。少しずつではあっても、確実に前に進んで居る気がする。”冒険チャリ”のグワイヒア号とだから、(人力で)こんな場所へも来ることができるんだなぁ...などと長閑に感慨に耽って居たら、すっかり半時も過ごしてしまった。いけね、布団干しっぱなしだ(笑)。今回はここで折り返すこととした。

復路。けれども何だか、只来た道を戻って帰るのが惜しい気がして、町境を過ぎた所からぐるり。わざわざ遠回りして団地の中を抜けて、午後三時半頃に帰宅。この夏の最後の散輪は、走行距離32キロの山の道となった。



バス停から眺める景色。残暑は兎も角、夏が終わる。





*1:とは云え、やっぱり激坂は勘弁ね…。

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