双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

海の道

|散輪|


先週が山だったから、今週は海かなぁ…ってんで、隣町の海岸沿いに続く旧街道を走ってきた。タイヤに空気入れて支度して、正午ぴたりに出立。

途中まではいつもの県道Aから越境→ド平坦一本道を行くコース。そこから先は線路を跨いで市街地に入り、坊ちゃんズのお医者で馴染みの道を国道との合流点まで。忙しない国道を横断して、ひと度細い道に入れば旧街道である。昔からちいとも変わらぬ街並みは、昼を少し回ってひっそり静かの佇まい。二本ほど海側に通りを入ると、すぐに小さな漁港が見えてくる。数隻の漁船が並んで揺れ、釣り船屋の前の網棚の上で小魚が日干しされ、海風に乗った潮の匂いが強く漂う。嗚呼、港だねぇ。
ほんの少しの間に防波堤の端まで走り切って、人っ気の無い小さな漁港を後に再び旧街道へ戻る。それまで真っすぐ平らだった道が、港を過ぎた所からは地形に沿うよに坂とカーブの連続に変わる。登って下ってキューっと曲がって。緩急入り混じった坂とカーブは何れも小さくリズミカル、さながら海を見ながらのローラーコースターみたいだもので、愉しい愉しい。短い登りは立ち漕ぎの練習にも丁度良いし、何しろ海沿いを走るこの爽快感ったら!

ルンルン軽快に走る(笑)うちに、やがて団地の端っこが見えて来たので、松林に囲まれた公園でひと休み。ベンチに腰掛けて麦茶とオールレーズン、それと塩羊羹もモグモグ。程好く仄暗い松林の中は風が涼しく、きれいに手入れがしてあって、ゴミ一つ落ちて居ない。


公園の柵の向こうに水平線。


人心地ついて涼んだら、さてと。道の続きを行こうかね。相変わらずのアップダウンとカーブを進めば、やがて道は団地の中へ入って行く。短い急勾配を二つ越えてシャーっと下ると久々に平らな道となり、信号の在るT字路まで来れば砂浜の在る海岸への入り口が近い。左を行けば海岸、右はバイパス方面だが、折しもこの辺り一帯は道路の拡張工事の真っ最中なのであった。この先の新しい国道バイパスと合流する辺りが近頃、商業施設だの何だの再開発でごちゃごちゃしてきた所為で、恐らくはこんな小さな裏道へも忙しなく車が流れ込み、交通量が激増したためであろう。
ふむ。ここからどうしようか。拡張工事は暫く先へも続いて居る風であるし、どのみちバイパス手前まで行っても引き返すだけなので、一度海岸口の駐車場へ降りてくるり、Uターン、来た道を折り返すこととした。

行きも帰りも海沿いローラーコースター。海を見ながら走るのは、ぱあっと開けた解放感が在って、山とはまた違った種類の愉しさが在る。日焼け止めのとっくに剥げた頬っぺたに、塩辛い海風がちりりとした。旧街道、また走りに来よう。
帰り道も三分の二を戻った辺り。無性に炭酸が飲みたくなってきて、図書館前の自販機でレモンスカッシュを買った。木陰のベンチに腰掛けてシュワシュワと飲みながら、あ。今日はずっとアウターギアのままだったな、と思う。残りのおやつも片付けて、さあ。もう一っ走りだ。ついこないだ未だ緑だった田んぼの早稲が、もうすっかり色付いて首を垂れて居た。午後二時二十分、帰宅。



行って帰って凡そ32㎞、海沿いの旧街道を行くは愉し。

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