双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

台風の接近とお小水問題

|若旦那|


超大型台風がじわじわと接近する、日曜の朝。
若旦那が、何やら苦虫を噛み潰したよな顔して、
猫厠と茶の間を行き来し、股をしきりに舐めて居た。
すわ、四年前の事変()が頭脳に蘇る。
こりゃ大変だ!お小水が詰まったに相違ない!
生憎、日曜のお医者は午前中のみの診療である。
開店の一時間ほど前だったが、急遽開店を遅らせて、
不機嫌な若旦那をキャリアーに詰め込み、お医者へ急ぐ。
果たして、診断結果は「結石による尿路閉塞」であった。
鎮静をかけてのカテーテルによる処置などの後、更に
一晩の入院が必要とのことで、不機嫌が益々不機嫌に。
すまん、若旦那…。


夕刻頃、台風の接近に連れて不穏となる空模様に、
結局は営業を切り上げて早仕舞いとする。
お医者から電話。血液検査の腎臓の値が良くないらしい。
先生曰く、尿路閉塞による一時的な数値かも知れぬが、
以前から腎機能が悪くなって居た可能性が高い
とのことなのだけれども、日々お世話し観察して居る
主としては、否々。そりゃあ前者でしょう?と。
若旦那不在の異変に気付いたのだろ。忍びちゃんが
室内をうろうろとして居たので、兄ちゃんはお医者へ
入院になっちゃったよ。だから今晩は二人で寝るんだよ。
無口な忍びちゃんは、状況を理解した風の顔をした。


翌、月曜の朝。明け方まで続いた、建屋を揺らす程の暴風に
まんじりともできず、ぼんやりした頭に鈍い痛み。ううむ。
気圧の所為かしら。九時半頃、お医者から電話が在る。
一晩点滴をした後、改めて行った血液検査の結果では、
腎臓の値は全て正常値に戻って居るので、数値の上昇は
閉塞による一時的なものであろう、とのことであった。
昼前に迎えに行き、不機嫌極まりない若旦那を連れて帰宅。
「ただいまー。兄ちゃんのご帰還だよー」
忍びちゃんが無言のまま、タタタと奥からやって来て、
鼻チューで出迎えると、若旦那、アオーとひと鳴きした。
そうです、我が家です。何やら主も鈍い頭痛が引かぬため、
午後は一人と二匹で寝台の上にごろ寝して過ごす。


幸い食欲旺盛で、厠に数回の排尿も確認できたので、
一先ず安心と云うところではあるが、油断禁物。
経過に気が抜けぬ日々が、暫くは続くこととなろうなぁ。

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