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【前回からの続き】
『其の一』は→◆
『其の二』は→◆
さて。ホリスティックケアにおける「健康」と云うのは、単に病気でない状態のことを指すのではなく、体と云うものを”ひとつの全体”と捉え、精神や環境なども含めた全ての要素がバランス良く調和し、リズムの取れた状態のことを指すものであって*1、その健康の基礎を担うのは先ず質の良い適切な食餌、加えて日頃からのケア。それが免疫力や自然治癒力を高めることへと繋がってゆく、と考える。
しかしながら、バランスやリズムと云うのは様々な要因が関わって変化するもので、常に一定ではない。時にはバランスの乱れにより体調を崩すことも在るだろうし、ワクチンや何らかの投薬など、外側から避けられない負荷のかかる場合も在るだろう。そうした場合のケア、メンテナンスとして大いに役に立つのが、薬草であるハーブから拵えた液体のチンキ剤なのだ。
「チンキ剤」(=tincture)は、アルコールやグリセリンと云った溶媒に生や乾燥させた薬草を数週間漬け込み、その成分を抽出したもので、薬草の持つ薬効が高濃度にぎゅっと凝縮されて居る。拙宅では亡き祖母が毎年、乾燥させたオトギリソウをホワイトリカーに漬け込んで常備薬を拵えて居り、虫刺されから裂傷、火傷まで幅広く使えて重宝したものだけれど、あれがまさしく薬草のチンキ剤であった。チンキ剤の形態が有用なのは薬効の高さに加え、経口による内服は勿論、止血や消毒などの外用、点眼液など多様な使い方ができる点である。ただし、溶媒にアルコールを使って抽出したものは、薬効が最大限に生かせる上、ほぼ半永久的な長期保存が可能である反面、味は決して宜しくない(特に犬猫はアルコールの味や匂いを嫌う)ため、経口投与に不向きなのが難点。一方、ベジタブルグリセリン抽出のものは、保存期間が一年から数年と比較的短く、薬効成分もアルコール抽出のものと比べるとやや劣るのだが、グリセリンの特徴である甘みによってチンキの味も甘く仕上がり、犬猫への投与が非常に容易なため、グリセリンチンキの方が何かと使い勝手が良い。勿論、こちらも動物だけでなく、人間も兼用できるので我々も積極的に利用したい。
ハーブチンキやサプリメント。スポイトや計量カップ、ピンセットなどの用具がまとめてある。
ハーブチンキは何れも、アルコールを含まないグリセリン抽出のもので、黒蜜のよな甘味が在る。
■各種ハーブチンキ。
目的に合わせ、数種類を組み合わせてブレンドする。
(上段左から)
自家製・解毒+免疫ブレンド、ダンデライオン(全草)、ゴールデンシール、エキナセア、マリアアザミ、(ハーブチンキでは無いが)コロイダルシルバー
(下段左から)
マシュマロウ、イチョウ、ホーソーン、レッドクローバー、バードック、ダンデライオン(根)、アストラガルス、クリーバーズ
私の愛用して居るのは一部を除いて、米『Nature's Answer』社のグリセリンチンキである。使用頻度の高いものは60mlの大瓶だが、他は皆30ml入り。他社よりも圧倒的に種類が豊富なのと、品質の高さ、その割には手頃な価格が魅力で、ハーブティー同様に『iHerb』(◆)にて購入して居るのだけれども、HPは日本語で表示され、カスタマーサービスも日本語対応なので、海外通販でも安心して利用できるのが実に有難い*2
これらは何れも人間用ではあるが、忌避すべき種類を除けば、勿論、動物にも使用できる。投与量は、犬猫の体重を5kgとした場合、人間の成人に対する量の凡そ1/10程度、10kgなら1/5程度を一日二回。『Nature's Answer』社のグリセリンチンキは、成人の一回量が(付属のスポイトで)28〜56滴とあるので、5kg前後の猫に用いるのであれば、一回量は3〜6滴程度となろうか。余程のことでも無い限り、副作用などの心配は無いと思われるが、先ずは”控えめ”な量で様子を見て、徐々に調整することをお勧めする。
又、これらの投与に際しては、休みを設けたパターンを作るのが望ましい。例えば一週間のうち”五日投与したら二日休む”と云った風に、一週間を一つの単位として行うのが覚え易いだろう。因みに拙宅ではこのパターンを採用し「火〜土は投与」「日・月は休み」として居る。休みを設けることには利点が在り、一つにはハーブに対する反応や効果を確認することができると云うのと、もう一つは長期使用による耐性や毒性の可能性を避けるためである。
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■拙宅の自家ブレンドチンキ、二種。
【ホビ家のデイリーデトックス+腎ケアブレンド】
季節の変わり目など、日常的なデトックスに腎臓のケアも兼ねる。
(割合は全て同量)デトックス:肝臓の解毒と保護。
腎ケア:腎部の血液循環を促進、強化。泌尿器、腎臓の保護。
- アストラガルス
免疫力の強化、向上。
【ホビ家のスペシャルデトックス+ケアブレンド】
ワクチンや投薬負担のための特別ブレンド。ワクチン接種、手術などの前後一週間、集中的に与える。
(割合はマリアアザミ、ダンデライオン:2 エキナセア、アストラガルス:1)肝臓の保護と回復。解毒。
- エキナセア、アストラガルス
免疫力の強化、向上。
良い材料さえ手に入れば、チンキ剤を自ら仕込んで拵えることもできるが、タイムだとかローズマリーだとかのありふれたハーブなら可能でも、そうでないものについては材料を揃えることからして難しく、成分の安定した出来にするのも難しいであろうから、初めから市販のチンキ剤を揃えるのが賢明かと思う。それらを使い、目的に応じて組み合わせを考え、ちまちまとブレンド作業するのは、実に愉しいものである。
【次回、其の四。まとめへ続く】