|猫随想|
昨晩、洗濯物を畳みながら、すぐ傍に寝息をたてて眠る二匹の寝姿を見て居たら、
何故だかふと、其々のやって来た日のことが思い出され、暫し畳む手を止めた。
洗濯物を畳み終え、改めて記録を辿って読み返せば、やがて遥々と。
そしてありありと。実に様々の記憶が途切れぬことの無い湧き水のよに、
ぶわっとよみがえり、穏やかな流れとなって胸底へ静かに流れ込んできた。
他愛も無いこと、思いがけぬこと。笑ったり、泣いたり、呆れたり。
ああ、そうだった。ああ、そうだった。
やわらかな毛皮に包まれた香箱のヴォワイヤンたちは、その聡い目で。
目に見えるもの。目に見えぬもの。あらゆる物事を、接する者の心の内側をも見、
そして我々の五倍の速さでもって、生涯の時間を生きてゆく。
やがて訪れるであろう別離の日を考えることも在るけれど、それまでは、一日一日。
一枚一枚日めくりの暦を新たにめくりながら、この旅の仲間の旅路は続くのだ。