双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

しんせい一箱分の一日を指でひねってゴミ箱の中

|縷々|


思いつくだけの言葉を全部、
ずらりと並べてみたところで
朧に浮かぶ春の月の下では、何ら
意味を持たないのであります。
毛虫の存在さえ忘れれば、
花咲く桜の木の下で、
やわらかな陽射しと、虚ろな春の風に包まれて
他愛のない、脳内幻想も許されましょう。
去りゆくものへの、名残は切なく、
新たなものへの、期待は儚く、
考え出すと果てしのない、何処へも
戻ってこられないような、
つかの間の春の幻。
一体、誰のための季節なのか。
それはさておき、今日も花粉は容赦がない。
お願いだから、ちいとは手加減しておくれ。
全く、いい歳の大人乙女は
化粧の一つもできやしません。
ならばいっそ、もう一つ
新しいメガネでも買おうかしら。なんて、
そんな些細な楽しみでも考えれば、
ほんの少しだけにしろ、
重たいまぶたも開くというものです。
嗚呼、春は待ってはくれません。
不意に背中を押すのです。
止まりなさんな、お嬢さん。
春を走って駆抜けて、
スカート揺らして、何処までも。

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