双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

お嬢さん去り、お嬢さん来る

|庭仕事|


去る七月下旬のこと。地植えで大きく育ったオールドローズの「マダム・ピエール・オジェ」のお嬢さんが、若くして天に召された。突然の災難であった。
或る日、伸びすぎた枝を少しすっきりさせようと、鋏を片手に麦藁帽かむって花壇へ向かうと、枝葉の全体が黄色く色褪せて水気を失って居ることに気付き、しまった、この猛暑で水切れか? 一先ず液肥を施して様子を見て居たのだけれども、翌日翌々日と、見る見る皴っぽく枯れ込む一方で、嫌な胸騒ぎに茂った下草をかき分けて株元を調べてみれば、あわわわー木屑が!紛れも無い、憎きテッポウムシの仕業である。どうりで成虫のカミキリムシを何匹か見掛けた筈だヨ…。それがまさかオジェに巣食って居たとは、我ながら察しが甘かった。
オジェのお嬢さんにはもう一人、鉢植えの双子が居るので決してお家が潰えてしまった訳では無いけれど、手塩にかけた地植えっ子だからね。そりゃあやっぱり相応に悲しいよね…。
以来、ぽっかりと空いたスぺエスを日々見るにつけ、残された喪失感だけがもやもやと広がるばかりで、気の晴れることは一日たりと無かった。嗚呼。バラを失った穴は、やはりバラでしか埋められぬのだ!


と云う訳で。
すっかり沈没して居た気を「えいっ!」と取り直し、新たなお嬢さんをお迎えすることとした次第 (笑)。さてしかし。お迎えするのは良いけれど、どうして育てましょうかね。
やれモグラだテッポウムシだ何だで、地植えばかり三株も駄目にしたことを踏まえると、是が非でも地植えに拘らずとも、いっそ鉢植えで構わんのじゃなかろか。否、むしろ鉢植えの方が良いのじゃなかろか、と思えてきた。大きな面積への壁面誘引が前提故、当然とばかり地植え以外へ考えが及ばずに居たが、十号だとか十二号の大鉢なら先ず問題無いだろうし、改めて思い返してみれば、今までは幅も深さも決して十分とは云えぬ狭小スペースに、辛うじて収まって貰って居た訳で、幾ら丈夫とは云え、バラにとっては些か気の毒な環境だったに相違無く、ならばかえって大鉢の方が良いだろう。それに鉢の深さ分、地面からの高さがぐっと上がるので、見栄えやバランスなどの点からも都合が宜しかろうし、塩梅や生育状態を見ながら、より良い場所へ鉢ごと移動できるのも大きな利点かな、と。


+++


で、こちらが購入予定のオールドローズ二種。

ジョアシン・アネ (Joasine Hanet)
ポートランド、濃桃色、中輪、クォーターロゼット咲き、ダマスク (強香)

f:id:hobbiton:20190905210323j:plain:w380

濃厚なダマスクの香りに、小さなボタンアイを持ったお嬢さん。剪定次第でつるバラとして扱えるシュラブ樹形とのことなので、思い切り長めに伸ばしても良いし、コンパクトにこんもりと育てても良いかな。ポートランド系は病気に強くない印象が在って敬遠して居たけれど、こちらはめずらしく丈夫なのらしい。「強健」は必須条件よね(笑)。

ソンブロイユ (Sombreuil)
ライミング、クリームホワイト色、大輪、ロゼット咲き、ティー (中香)

f:id:hobbiton:20190905210320j:plain:w380

こちらはしっかりつる樹形で、オールドローズには希少な四季咲きに近い繰り返し咲きの性質を持つ、実に優秀なお嬢さん。やわらかなクリームホワイトの色合いと云い、大輪のクラシカルな花姿と云い、壁面へ誘引するには申し分無いかと。今まで拙宅には居なかったタイプで、勿論、病気に強い丈夫な子です(笑)。


お迎えの準備は種々悩ましくも、愉し。

お年頃

|雑記|


八月も末の頃となって一旦落ち着いたかのよな猛暑であるが、
九月には再び、残暑と名を変えて居座り続けるとのことで、
やれやれ。もう好きになさいよ、と云った感。


そんな中、真夏の疲れなのか何なのか。
原因のよく解らぬ蕁麻疹様の湿疹が掌や手指に出て、
水泡のよな痒みを伴う箇所も在り、煩わしいことこの上ない。
昨年の今頃にも、やはり同じよな症状で皮膚科にかかり、
「汗疱状湿疹」との診断を受けたのだけれど、再びこうして
ほぼ同じ時期に同じ症状であるので、季節柄のものなのか。
昨年はステロイド系軟膏を処方され、気は進まなかったものの、
背に腹は変えられぬと是を塗布。弱めのステロイドではあったが
比較的短期間で湿疹は治まり、以降同様の症状がぶり返すことも無く、
今の今まですっかり忘れて居た。処方の軟膏は慎重に使用したため、
開封のまま使わずに一本残って仕舞ってあったのを幸いと、
ちびちび少量ずつを塗布し、経過と様子を見ながら凌いで居る。
使い終えたら、改めてお医者へかかりに行かねばなるまい。
其処へ加えて、数日前に股関節に違和感を覚えながら、
無理にストレッチしたのがいけなかったのであろう。
何処かの筋を痛めたらしく、暫しお世話にならずに済んで居た
鍼灸院通いも、ここへ来て復活(笑)。全く、弱り目に祟り目である。


私自身に自覚は薄いのだけれど、やはり心身に疲れが蓄積したのか。
億劫からの怠惰が招いた結果か。或いは、その両方かも。
何にせよ、歳を重ねる毎に様々の機能が弱ってきたのだなぁ。
もっとしっかり身を入れて体を整え、養生を心得ねばならぬなぁ。
多少の無茶だとか楽して云々は、もう通用せぬお年頃なのである。

若者たち

|雑記|


やれやれ。長くてしんどかった盆休みがようやっと終わり、
心身共にふうっと力が抜けて、久々の涼やかな空気に安堵する。
連休の始まる前と中程だったろか。夏休みと云うこともあり、
昔から知る知人のお宅の娘さんや息子さんたちが、
奇遇にも立て続けに訪れて、数年ぶりに顔を見せてくれた。
つい数年前まで高校生だった少女が、あっという間に大学を出て、
教員として中学校で教鞭をとって居る。また別の子は、あらまぁ。
きりりとしたパン職人となって、毎日実直にパンを焼いて居る。
実に十年ぶりで訪ねてくれた子は、最後の記憶が小学五年生。
それが今や誰だか分らぬ程に大きくなって(笑)、大人びた顔つきで、
実に名門高専校の最終学年だと云うのだからなぁ。


彼らは、子供の頃に親御さんやお爺様ら大人に連れられて、
この店で過ごした時間のことを、ちゃあんと覚えて居てくれる。
大きくなってからも節目節目に来店して、近況報告してくれたり、
大学以来住まいが遠方になってからは、帰省の際に訪ねてくれたり。
成長過程を知る度合いは異なれど、どの子も本当に立派になって、
地に足の着いた、自分の人生をしっかりと歩んで居るんだなぁ。
そんな皆を前にして、何だか、ホビ小母ちゃんは感慨深くて、
自分に子供は居ないけれど、実に誇らしい心持ちになったよ。
片や我が身の同じ年頃を振り返れば、毎日ちゃらんぽらんでお気楽で、
彼らの姿の幾分にも及ばぬ、全くの体たらくであったことか。
それがそのまま大人になり「あんな大人になってはいけないよ」
の見本のよな、こんな大人になってしまった訳で、全くもって、
あと数年もすれば知命と云うのに、楽々高座椅子に寝転がって
あずきバー齧り齧り、銀魂など読んで居る場合ではない。
まぁ尤も、今更どうにかしてどにかうなるのでも無いけれど。


店の前の駐車場で、飛べるよになったばかりの縄跳びを披露してくれた子。
幼い弟に髪が束に抜ける程引っ張られても、お姉ちゃんだからと我慢して居た子。
両親の不仲が原因で姿を消した飼い猫の話をしながら、目に大粒の涙を浮かべて居た子。
折に触れて成長を見てきた子供たちが、すっかり頼もしい立派な若者になった。

<