双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

秋に耳澄ます

|散輪|


あまりの暑さに怖気づき、ちいとも自転車に乗らぬ夏であった。丸ふた月も乗らずに居たのでリハビリがてら、山の食堂まで山の道を走ろうと思い立つ。片道約14キロの道のり。
久々の坂道にゼーハー云い云い進めば、こないだの集中豪雨の爪痕が至る所に残って居た。土砂崩れの起こった場所に巨大な黒い土嚢の固まりが積み上げられ、数か所が未だ片側通行。路側には湿っぽい土砂がもったりと溜まって、走るとじゃりじゃりした。時折止まって爪痕を観察しながら道を進む。最後に大きな大きなS字カーブをぐーっと曲がった先に、長閑な山の食堂が見えてきたところで、時計は十二時半。あー、お腹空いた!

草の上へ自転車停めて、ふと空を見上げたら、すっきりときれいな秋の山の空が広がって。数日前から股関節の調子が芳しくなかったので、来ようかどうしようか迷ったのだけれど、うん。ちょっと頑張って走って来て良かったな。走って動かしたら随分と楽になったし、空気が本当に気持ちいい。やっぱり今日もあったかい天ぷら蕎麦をお願いした。風通しの良い席にひとりきり。季節の野菜と山菜の天ぷらが乗っかって、小ぶりなお稲荷さんとお新香もついて、しみじみ美味しい。



赤とんぼに山羊君に鳥の声。耳を澄ますと色んな山の音、秋の音が聞こえる。



また来よう。

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