双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

五十路の着物

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着物を着始めたのは二十代も末の頃で、その頃に好んで着たのは (頂き物やお下がりの着物以外では) もっぱら骨董市で買い求めた銘仙やお召であった。途中着物を休んだ時期も在ったが、五十肩が治って以降のここ数年は、後ろ手での帯結びも復活し「週に二日は着物」と云うところへ落ち着いた。仕事に着るから当然普段着で、丈は短めに着て上から割烹着。履物も所謂”軽装草履”と云う普段履きである。時折「あら、お着物なんですね」と云う人が在ると、冗談めかして「”お”のつかない”着物”です」と返して居る(笑)。

年齢が重なれば当然、箪笥の中身も少しずつ変化する。何せ今や五十路である。派手な色柄の銘仙小紋などのアンティークは、一部を除けばさすがにもう着られないので、好きな人に譲ったり、裁縫の材料として解いて裂(きれ)にするなどして始末良く。若い頃には大して興味も無かった地味色の紬の類が、それらと入れ替わるよにして箪笥に収まってきた。帯も然り、こってりした刺繍帯や分厚い芯地の重たい帯から、ざっくりして軽い織の八寸帯や、薄い芯地の染め帯などへ。兎に角、締めるのが楽な軽い薄い帯へと変わった。
何れも新品だの誂えだのではない。状態の宜しい中古品の中から自分好みのを根気よく探し出して、三千円とか五千円とかで買い求めたもので、下手したら、そこいらのカジュアル服よりもずっとお安い。それが先々数十年も着られるのだから、こんなに買い得なものも在るまいよ。柄の好みは相変わらず縞と格子狂いだけれど(笑)、近頃はそこへ無地が加わって、何と云うかまぁ、現時点ではなかなか良い塩梅じゃないかしら、と思って居るのであった。

着方についても齢に連れてアップデイト中である。昔なら”便利グッズ的着付け道具”の類は、どうにも邪道な気がして避けて居たのが、四十路後半に訪れた身体的な不具合がきっかけで、図らずともその恩恵に預かる格好となり (四十路の着付け再考 - 双六二等兵 参照) 、以来「うん、歳取ったら楽なのが良いよね!」と大きな心で柔軟に考えることにした(笑)。そう、道具は使い様。*1襦袢は昔からずっと二部式の筒袖うそつきタイプを愛用して居て、今も変わらないが、伊達締めや紐類の小物に関しては、減らせるようであればできるだけ減らしたり、より楽なモノと替えるなどして、確かめながら様子を見、問題の無いことが分かったら「是で良し」 少しでも疑問に感じることが在れば、何かしら改善できそな部分を探して試し、確認し、都度柔軟にアップデイトしてゆく。

他にも、帯の位置をちょいとだけ低めにしてみたり、枕もいっそ使わずに厚紙を細長く折ったのと替えてみたり。山吹茶の紬に芥子色の半衿合わせて似た色で濃淡にしたら、あら意外に素敵かも。などなど。今この年齢だから合う着物が在って帯が在って、素材や色合いや着方が在って。そんな五十路の着物が充実して居て実に愉しい。

*1:お太鼓の後ろ手が辛かった時期に世話になった『帯止め金具』現在は幸い出番が無いのだが、いずれまた必要になると思うので、ちゃんと仕舞って取ってある。因みに、近頃の気に入りは『すずろベルト』と『コーリンベルト しっかり』の二つ。前者は半襦袢に使って楽ちん快適。後者は着物に使って伊達締めも胸紐も省略、こちらも楽ちん快適なのであるヨ。

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