双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

実践の効果

|太極拳|


去る月初めの稽古で、こんなことが在った。
先生が何やら大きな袋を抱えて来たので、はて。何かしらん?と気になって居たのであるが、稽古が始まるや、その袋から取り出されたのは、何と。格闘技用のキックミットであった。
曰く「ええとね。以前から何度も云って居ますが、太極拳は体操でも踊りでも無く、武術です」だから、太極拳套路動作には当然、其々攻防の意味が在って、それをきちんと分かった上でやるのと、知らずに居るのとでは、全く違ってくる、と。しかし、誰かを相手に格闘する機会なぞ、滅多に無い訳だから、たとい攻防の意味が理解できて居たとしても、相手との距離の取り方や拳の当て方など、実際にやってみなくては分からぬものだ、と。そこで、前述のキックミットの登場なのである。


早速に、二十一式は”転身搬攔捶(ズァンシェンバンランチュイ)”の、相手の鳩尾を拳で突く動作を実践することとなったのだけれども、先生がミットを構え「はい、ホビ野さんからね。ここ。真ん中を鳩尾だと思って、遠慮せずに拳で打ってみて下さい」ええと、搬攔捶の斜に構えた体勢から、拳を作って......ポスッ...(笑)。「ね。実際にやってみないと分からないものでしょ(笑)」腕力がどうこうなのじゃ無い。相手との距離が遠すぎて、ちゃんと拳が当って居ないのである。再び距離を詰めて試してみるも、今度は近過ぎて駄目。いやはや、人を殴るってのも結構難しいもんだ(笑)。段々と距離の取り方が掴めたところで、再々挑戦。三度目の正直はきちんと当って、バシッ!と実に良い音がした。「分かる?この音です。体勢と力、距離が正しければ、こう云う音がするんです。しっかり衝撃も在りましたよ」
日常生活の中で相手の鳩尾にキツイ一発を食らわす、なんて状況は、先ず皆無だろうけれども(笑)、この実践一つでも、搬攔捶の意味、動作そのものが以前とは全く違って来る。それにしても。太極拳をここまで具体的に、熱心に指導して下さる先生の元で学べる、と云うのは本当に素晴らしいことであるなぁ。

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