双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

|徒然| |忍び|


昨晩、ひどくどきりとさせられる出来事が在った。厠箱で用を足し終えたチビが、ふと一瞬の間を置いて、箱の縁で前足を拭く仕草をし、更に箱から出た後、下に敷いた新聞紙を後足でトントントン、と軽く蹴ったのだ。不意にわっと込み上げるのを堪えることが出来なかった。何故ならそれは、亡き爺さんが用を足した後でいつも欠かさずに居た仕草そのもの、だったのである。嗚呼、この子は。この子は、やっぱり爺さんの生まれ変わりなのかも知れない・・・。
チビを側溝の中から救い上げて以来ずっと、その想いは薄い皮膜のよに張り付いて離れず、しかし里親に貰われる仕合せも在るのだと、あえて考えないよに努めてきた。けれども、昨晩再びふっと想いの過った、そのとき。今までそんな仕草をしたことの無かったチビが、まるでこちらの心を読んだかのよに、爺さんと全く違わぬ仕草をして見せたのである。
”機”を得た”縁”を感じずには居られぬチビ猫とのめぐり合わせへ、懐かしい”印”を確かに見付けた気がした私は、この気持ちを押し込めることなど、どうしたって無理だったのだな、と悟った。



保護されて三日。カーテンをよじ登り、おもちゃのボールで得意気にマルセイユ・ルーレットを披露するなど、目方も増えて日に日に元気となってきたぞ。

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