双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

センチメンタル歳時記

|雑記|

折角の秋だと云うので、地元の渓谷へ
出掛けてみることにした。シーズンのみ
運行の臨時バスに乗り込むが、是は勿論
他所からのお客さんに向けたものだから、
地元の人間が乗ることは、先ず無いらしい。
いざ着いてみれば、平日だと云うのに、
駐車場に大型バスは連なり、渓谷への道は
其処も彼処も観光客で溢れ返って居る。
しかしそれも、只一箇所の紅葉の名所まで。
携帯電話を宙にかざす、無数の手の間を
縫いながら、ようやく先へと抜け出せば、
其処からは誰一人見付からない。喧騒は
間も無く後ろへ遠のき、秋の木立の中を行く。
途中に立ち止まって、冷たく冴え澄んだ
空気を深く吸い込むと、沢から水の音。
暫し静けさに身を置いた後、やがて道へ
戻れば、再び人の群れにぶつかる。
それもこれも承知のこの時期だ。
やれやれ、仕方が無いと諦めるも、
何だろか。遣る瀬無い、この心持ち。

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