双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

晩秋に

|日々|


昼に拵えた、揚げだし豆腐のみぞれ煮。
柄の取れた雪平の中に、出汁を温める。
おろした大根を加え、火を止めたところへ、
柚子を刻んで是をさっと放てば、すうと
細く立ちのぼる、清々しいふくよかな香り。
台所に居て、こうして鍋を覗きながら、
ゆっくりと。じんわりと。
棘ばった心がほどけてゆく。
そう。季節を只そっと留めようとしても、
余計な煩い事ばかりが邪魔をして、
平らな、穏やかな心持ちになれずに居た。
椀によそって、両の掌で包む。
秋もじきに、終わる。

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