双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

|映画|


ぼんち [DVD]

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少し前に録画してあった、市川崑 『ぼんち』 など観る。船場は老舗足袋問屋の五代目である雷様。所謂一人息子の、ぼんぼんであるのだが、是がいつでも昼行灯みたいな顔して、のらりくらり飄々と、実に掴みどころの無い旦那なのだ。しかし、時代劇のニヒルな姿は云わずもがな、こちらの雷様もなかなかに捨て難し。また、雷様の祖母・毛利菊枝と、母親・山田五十鈴は、共に婿取りで実の母娘同士なのだが、真面目な顔で世間の嫁姑ごっこを演じてみたり、嫁いで来た中村玉緒に子だけ産ませて、陰険にいびり出してしまったりと、兎に角、この二人が秀逸。*1そこへ加えて、船場に古く伝わる諸々のしきたり云々は興味深くて面白く、中でもむむぅと唸ったのが、妾の芸者・若尾文子が本宅伺いに来る場面。ここは、凄い。
妾は他にも、草笛光子京マチ子越路吹雪と其々個性的。それにしても市川映画の女は、怖い。しれっとした顔の腹の内と云うのか、ふとした折、女の本性がぬうと覗く。終盤のお寺の風呂の場面で、雷様がすっぱりと女から足を洗う気になるのだけれど、あれは何だか妙に納得できる。
でも。一番怖いのは、婆さんの毛利菊枝だけれども。

*1:玉緒の月のものを厠へ調べに行く場面だとか、雛壇の前でずズズと甘酒をすする場面だとか。細かいところが随処に愉しいのだな。フフフ。

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