双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

We’re going nowhere but we’re ready to go

|音| |回想|


Thirteen

Thirteen

*1


ちょっとだけ良いかな。うん、ずっと昔の話だよ。
これ。昔みたいに、しょっちゅう聴くことはもう無くなったけれど、
何だかね、今でもたまに聴きたくなるんだ。
それがどうして今日だったのかは、良く分からない。
ケースだって何処も彼処も傷だらけだし、
スリーブの紙なんかはいい加減皺くちゃだし、
本当に草臥れちゃってるけど。
盤を取り出して、プレーヤに乗せてさ。
一瞬の間が在って、最初の音が鳴り出すときにさ。
もう、どうしようもなく胸に込み上げてくるんだ。
それが何かなんて、とても言葉になんかできない。
言葉になんかならない。あの音の渦が身体を飲み込んで、
大きく包み込んでゆくよな、あんな気持ちって無いよ。
聴くときはいつだって。あの『Hang on』の一音だけで、
初めて聴いたときみたいに、同じ気持ちになるんだ。
青春の想い出は、いつも、この一枚と共にあった。
勿論、他のアルバムだって大好きだけど、でもね。
やっぱりこの中に。もう過ぎてしまった毎日。数え切れない毎日が
溢れるくらいに在って。あのとき一緒だった友達には、
もう遭わなくなってしまった人も居るけれど、これを聴いて居ると、
あの頃のことをはっきりと想い出せるよ。今でも。
昔は気の利いたサイズも無かったから、
Tシャツは皆高円寺や西新宿を探し回って
ブカブカのを買って着てたっけ。私の紺色のを見たあの子は、
それ私も欲しかったって云って、半べそかいてたなぁ、とか。
モッシュピットでもみくちゃにされながら、何だかとても愉しくって、
知らない男の子らと肩組んでさ。一緒に『Norman 3』歌ったなぁ、とか。*2
帰り道もやっぱり知らない誰かが混ざって、肩組んで大合唱だった。
『Radio』『Tears are cool』 嗚呼、全部歌えるよ・・・。



あれから随分と時間が経って。私たちが歳をとったよに、
四人も歳をとった。*3それは当たり前のことなんだけど、でも。
私たちも四人も若かった頃。其処に流れた”時間”と
其処に在った”音”は、やっぱり”あの頃”の中にしか無いんだね。
だからいつまでも。この一枚の中にぎゅうと詰め込まれて、
失われることも色褪せることも無く、眩しいままなんだと想う。
良く考えたら、辛いことや嫌なことだって随分と在った筈だのに、
どうしてかな。今ではあんまり想い出せない。想い出せない。
これを聴いて想い出すのは、泣いたり笑ったり切なくなったりしながら、
音楽と一緒に駆けずり回って居た、あの眩しい日々のことばっかりだ。

*1:手元のは'93年の国内盤。『120 Mins』の歌詞にギターのコードが書き込んである(笑)。

*2:'94年の初来日には行けなかったから、是は二度目の来日のとき。

*3:ブレンダンは途中で居なくなっちゃったけど、ね。

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