双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

働く靴

|モノ|


二年程前。長年履いて居た靴がとうとう駄目になった。
女学生の頃に買い求めたもので、爪先にスチールの入った、
チェリーレッドのドクター・マーチン(三つ穴)だった。
長い年月の間にあちこち草臥れて、傷だらけの爪先は
ビーフジャーキーをちぎったよになって。履き口がすっかり
壊れてしまい、けれども、もう履けないのだと知りながら、
どうにも捨てるに忍び無く、暫くはそのままにして置いた。
しかし、それでは死んだあいつも浮かばれまいと、いよいよ
今年春の来る前にさよならをした。あれだけ見事に履き潰した
のだから、あいつもその生涯を充分にまっとうしただろ、と。


仕事に日々に働く靴は、こと堅牢に、頑丈になくてはならぬ。
すぐにへたってしまうよな、やわな靴などお呼びじゃ無い。
かと云って、見目とて疎かには出来ぬもの。何しろ、面構えは
重要である。はてさて、是はどうしたものだろかと、数ヶ月
考えあぐねた末。結局は、再びマーチンを履くことに決めた。
色は黒で同じ三つ穴。三十路も半ばを過ぎたことであるから、
さすがにスチールトゥは遠慮し、比較的厚めの靴下の多いこと
など考慮して、サイズは UK5 を選んだ次第。*1
さて。
買い求めたのを早速に履いてみるが、案の定、硬い。
履き始めが硬いのは承知だったはずだが、はて。
果たしてこんなに硬かったっけか(笑)?そして、重い。
暫く軽い靴ばかりを履いて居たので、この重さは懐かしい。
又サイズだが、UK5 だとやはり微妙に大きいのかなぁ。
しかし、どうだろう。
見るからに堅牢で、見るからに無骨で。
「働く靴」 と云う言葉が、こんなに似合う靴も在るまい。
そうそう。黄色いステッチの愛嬌も、忘れてはいけない。
今度の君とも、長い付き合いとなるかしら。
どうぞ宜しく頼みます。

*1:以前の靴は、確かUK4 1/2であったと思うのだけれど…。現在はどうやらハーフサイズを製造して居ないらしい。

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