双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

季節の向こうがわ

|庭仕事|


春を迎えても尚、寒さ和らぐ気配は希薄なままで、
季節に対して懐疑的にならざるを得ぬよな、
気紛れの日ばかりがずっと続いて居たけれど、
うっかりと寝過ごしかけた程、今日の天気は春らしい
やわらかさと、清々しさに満ちて、芽吹いた鉢植えの
所々に残された枯枝が、やけにみすぼらしく見える。
家々のベランダや物干し場には、待って居ました
とばかりに布団が干され、見渡せる範囲の殆どに
布団の並んだその様は、なかなか壮観と想う。
布団も表に出れば、人も出る。日中はそこそこ忙しく
仕事に追われ、ここ暫く遠ざかって居た感覚、穏やかさ
から得るのとは、また違った類の充足を、僅かばかり、
手にすることができたよな気がした。
午後の落ち着いた頃、草花の手入れと向かい合う。
肌寒さや天候にかこつけて、だらだらと手入れを怠って
居たと云うのに、草花たちは健気に新たな若芽を育み、
蕾をつけ、至らぬ主人を、これぽちも責めはしない。
近所の園芸店に、知人のTさんが勤め始めたこともあって、
久々に店を覗きに行き、ゼラニウムだのナスタチウムだの。
この春になって初めての苗を幾つか買い求めると、
Tさんが、どのみち売り物にはならないんだけど。
ナイショね。と、こっそりエリカの鉢植えをよこした。
花芽や黄色くなった下葉などを切り、苗の幾つかは鉢植えに、
幾つかは地植えにする。粗方の移植が済んだ後、
少し下がった所からぐるり見渡すと、先週貰って来た
ラナンキュラスが、鉢の中に白い蕾を二つ、半分程
開かせて居るのに気付く。昨日は気付かなかったのに。
もうじき。もうじき良い季節になる。


|音|

Finding Forrester (2000 Film)

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庭仕事の後。春の日の夕暮れ刻に、ぼんやり。

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