双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

謎の部屋

|若旦那|



                 

拙宅の若猫ピピン殿であるが、
主が厠で用を足して居ると云うと
すかさず飛んで来ては、扉の外でガリガリ
或いは体当たり宜しく、ドシドシ始まるのである。
彼の思う所とは、差し詰め
「このちっこい謎の部屋の中で、お前だけがこっそり
鮨だの鰻だの、何か旨いものを食って居るのだ!」
と云った風であるのだろう。
どこまで食い意地の張った奴だ。
なあ、そうではない。
ここは大だの小だのと、用を足すところなのだよ。
ほら、お前の四角いアレと一緒なのだよ。
上目遣いで訝しがる若旦那に、
一応はそう諭してやったところ、
翌日。厠に入って間も無しに、
何やら外の部屋から、ざくりざくり。
矢鱈と派手に砂掻く音がする。
果たして、お前が厠なら俺様も負けじ、とばかり、
物凄い勢いで、猫砂を掻きまくって居たのだった。
実に単純。しかしながら、
実にかあいらしい奴であるなぁ、と想う。

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