双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

双子

|雑記|


双子の青年を見た。
歳の頃、恐らくは二十歳前だろか。
双子自体は取り立てて珍しい存在で無いけれども、
私が思わずぎょっとしたのは、この二人の青年が、
文字通りの上から下まで。寸分も違えず全て揃いで
居たからであった。子供の双子が揃いのなりをして
一緒に居るのは、しばしば見掛けるものだが、もう
十分大人に近い青年が、服装は元より靴、鞄、髪型、
細かな色に至るまで、全て二人で揃いと云うのは
極めて稀な、非現実的な眺めである。それはつまり、
こちらの背筋をぞくりとさせるよな、或る種の異質さ。
顔立ち等の外見的美醜に拘わらず、何か奇妙な
美しさと、冷たく無機質なエロティシズムとを備えて、
彼らが我々とは全く別の世界の生き物なのではないか、
と思わせるのだった。片方が上着を脱げば、片方が
同じ仕草で続き、同行者の話へ同時に相槌を打ち、
同時に返す言葉は、正確な機械で増幅させたよに、
まったく同じ声色である。そうした彼らの様子は
まるで、趣味の良い悪戯と云うのか。二人にしか
知りえぬ、意地の悪い上等の愉しみのよに見えた。

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