双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

白い部屋の窓

|雑記|

三週間程前、母方の祖母が転倒して骨折。
以来市内の病院へ入院して居り、今日は私が
付き添い当番のため、身支度して家を出る。
脚を吊って居るので身動きはできないし、
数日前に軽い肺炎を起こしたことで、食事は
未だ摂れず点滴のみであるから、水分をこまめに
摂らせるなど以外に、是と云った世話は必要無い。
しかし寝てばかりでは、昼夜を取り違え混乱して
余り良くないと云うので、誰かしらが傍に居れば
話し相手になってあげられるし、退屈せずに済む。
昼前に到着できるよに、バスの時刻を調べて
一旦、街場へ出た。長い時間には小物の一つでも
仕上がるかと毛糸屋へ立ち寄るが、生憎の休み。
本屋を覗いた後、駅の乗り場からバスに乗る。
乗り慣れた路線だけれど、終点までは初めてで、
いつも降りて居る停留所を過ぎると、車窓は
やけに目新しく感じられる。普段なら通らぬ道。
こんな道が在ったのだなぁ。野ざらしのトタンが
錆び付いた待合所。黄色い枯草の土手。旗日の
昼間だと云うので、大方人の出払って居るのも
あるのだろうが、まるで日常生活をそのままにして、
人間だけが忽然と、姿を消してしまったみたいな
真新しい団地は、其処だけが、ぽかんと取り残され
た風で、実に奇妙な感じだ。団地を左右に分断する
まっすぐの道路の先に、是また真新しい、真っ白の
四角い箱が見えてきた。ようやくバスを降りると、
何処かからか、曖昧な境界線を越えてしまった、
白昼夢の中の見知らぬ土地へ、一人だけバスに乗せて
連れて来られたよで、やっぱり奇妙な心地がした。


外来は休みだから、院内はがらんとして静かで、
病室の祖母は居眠りをして居る。肩をとんとして
小さく声を掛けると、すぐ起きた。おや、ホビ。
うん。今日は皆、用事が在るから私一人だけ。
持参した魔法瓶から珈琲を注いで、一息つく。
バスで来ると遠回りなんだね。あんな道、初めて
通ったよ。今年の紅葉?何だか茶色ばっかりで、
あんまりきれいじゃないみたい。ばあちゃん、
脚折っちゃったから、今年は見られないねぇ。
取り留めの無い話の合間に、水注しから飲み物を
飲ませる。強張った手を揉み解したり、お湯で
湿したタオルで顔周りを拭いたり。そうこうして
売店から帰ると、祖母はまた居眠りをして居た。
窓から色付いた山並みが見えれば良かったが、
残念ながらこの病室の窓からは、向かいの病棟に
隠れて見えない。看護婦さんの閉めたカーテンを
開けて、秋の午後の日を入れた。ほんの僅かの。


|音|


『アナザー・カントリー』で、ふと想い出した。*1

Our Favourite Shop

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ジャケの二人の後ろに在るポスターが、そうなんだよね。
背伸びして、大人気分で聴いて居たっけな。

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