双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

|縷々|


生温い南風が湿っぽい雨を引っ張って来て、
やがて勢いよく、春を知らせる風となった。
つられて明日は気温も上がると聞き、
就寝前、身支度の準備に些か難儀する。
終いに、抽斗から白い長袖を一枚出して、
箪笥の上に乗せた後、傍らの猫のすうと寝息を
聞きながら、唇の乾いたところに指をあてると、
ひび割れた真ん中が、ぴりっとなる。
舌先で小さく、ちろとなめると、
錆びた鉄のよな、鈍い血の味がした。

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