2009-02-13 夜 |縷々| 生温い南風が湿っぽい雨を引っ張って来て、 やがて勢いよく、春を知らせる風となった。 つられて明日は気温も上がると聞き、 就寝前、身支度の準備に些か難儀する。 終いに、抽斗から白い長袖を一枚出して、 箪笥の上に乗せた後、傍らの猫のすうと寝息を 聞きながら、唇の乾いたところに指をあてると、 ひび割れた真ん中が、ぴりっとなる。 舌先で小さく、ちろとなめると、 錆びた鉄のよな、鈍い血の味がした。