双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

My little Sunday

|日々|


いつぶりだろ。こんなに感じの良い日曜日は。
店明けから一人、また一人と集い始めた心善き人たちが、
午後も途切れることなくドアを開け、仕事自体は忙しい筈だのに、
けれど不思議と穏やかで、ちいともわさわさと気忙しくなく、
理想的なリズムとバランスでもって、この中の全てが回ってゆく。
男性も女性も、一人の人も二人の人も。
本の中の世界へ沈む人。穏やかに語らう人。勉強に勤しむ人。
見知らぬ同士が思い思いに集い、其々の時間を過ごしながら、
こんな風に素敵な空気を作り出し、共有して居る。
嗚呼、ここへ長く在っても滅多にないことなんだ。
たまにぽんと降ってくる、奇跡のよな一日。
きっと私にしか分からない、とても個人的でささやかな。
それがいつ、どんな風にやってくるのかは誰にも分からないけれど、
こんな日曜日がまたいつか訪れることを、淡く祈ろう。


最後の客人は、週に一度通って下さる、目元のきりりとしたお嬢さん。
黙々と書き物をする間も、背筋がすっと伸びて居て羨ましい。
昼間の素っ頓狂な暑さに呆れつつ、夜はやっぱり肌寒いですね、と
おかしな五月を苦く笑ってお見送り。ご馳走様でした。またどうぞ。
ドアの看板を裏返し、レジを上げ、掃除を済ませて、珈琲を一杯。
何とも云えぬ充足と安らかさと共に、店を仕舞った。


あ、そう云えば。
たったの一度もスマートフォンのシャッター音を聞かない日だったな。

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