双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

あわいにて

|縷々|


花冷え。薄曇り。風は強し。
白湯をちびちびと飲んで、ぐぐっと背伸びする。
久々の稽古へ向かう道すがら、農家の庭先。
花を終えつつある姿の良い梅の木の隣で、
寒緋桜がふっくらとした蕾を待たせて居る。
未だ少し寒々しい庭景色の中を、
丸々太った雄の茶トラが、悠々と横切る。
ちらり。こちらを一瞥した気がしたけれど、
くしゃみを二回して振り返ったら、もう居なかった。
三月の或る日。季節と季節のあわい。

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