双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

夏の終わり

|縷々|


鍼灸院で施術を終えた帰りに、何とは無し。
目鼻の先なのだから海へ行ってみよう、と想った。
昼下がりの海岸は海水浴場を仕舞った後で、只
しんと静か。波打ち際に並んだカモメらの他には、
離れた防波堤に釣り人が二人居るだけ。
遠く沖合いに、一隻の大型船が北へ向かう。
気温は高くとも、波音を運ぶ湿気の無い風は
さわやかで心地良く、空には薄く引いた鱗雲。
もう、秋の気配が混じり始めたのだな。
堤防に腰掛けて、暫しぼんやりと過ごし、
昼寝の中にまどろんだ住宅地を抜けて歩けば、
通り掛った中学校の第一音楽室の開いた窓に
白いカーテンが風に揺れ、吹奏楽部の練習だろか。
金管楽器の太い音がこぼれてくる。
プールにもグラウンドにも、誰も居ない。
夏が終わる。

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